日本のIT分野では、深刻な人材不足の解決策として、人件費の削減としての2つのメリットから開発業務を海外に委託する「オフショア開発」が積極的に取り入れられています。
オフショア開発先として、費用面や距離の関係から多く選ばれるのがアジアの国々です。
人気のある国は、ベトナムや中国が挙げられますが、最近では、タイもオフショア開発先として人気が高まりつつあります。今回は、オフショア開発におけるタイの魅力について紹介していきます。オフショア開発検討の際の参考にしてみてください。
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【オフショア開発の歴史】
1970年代より知的生産活動を発展途上国に移転する流れになり、日本も1980年代に開発費用削減を目的にオフショア開発を始めました。当初のオフショア開発先の主流派、中国であり、多くの日系企業が中国の市場に参入しました。
2006年以降、今度はインドやベトナムの国民性や技術力、コスト面の良さに委託が進み、2013年には日本企業の約3割がオフショア開発を実行しました。現在は、さらにタイやラオス、マレーシアといった国々にも関心が広まっていっています。
タイオフショア開発の現状
近年オフショア開発先にタイが選ばれている理由の一つとして、開発を委託する環境が整っているために、進出しやすいということが挙げられます。
タイには、1500社以上の日本企業が進出しており、約8万人の日本人が在留しています。
そのため、タイ語に精通していたり、タイの文化理解をしているブリッジSEが多くいることからもオフショア開発を行いやすい環境です。
新興国でありながら、インフラ整備が比較的整っているタイですが、日本と同様の自少子高齢化による労働人口の不足が問題となっており、若手のITエンジニアの不足が悩みの一つとなっています。すでに多くの企業がオフショア開発に乗り出しているので、人材確保は簡単にはいかないこともあるでしょう。
【オフショア開発委託の際のコミュニケーション】
タイの都市部では、英語が通じる人もいますが、大半が通じず、公用語であるタイ語でのコミュニケーションが一般的です。そのため、直接交渉するには、タイ語を駆使しなければならないので、難しく仲介役が必要になります。タイ語や現地文化に強いブリッジSE(橋渡し役)を一緒に雇うことも検討しましょう。
これにより、委託会社とのコミュニケーションを円滑にとることが出来るので、伝達ミスや依頼内容の齟齬なくなるでしょう。
【ブリッジSEとは】
ブリッジSEは、システム開発の一部を海外で行うオフショア開発を円滑に進めるための橋渡し役を担うシステムエンジニアを指します。
オフショア開発を行う理由は、海外の技術者を活用することで、人件費の削減と優秀なエンジニアの活用を行えるメリットがあるためです。
しかし、問題として、必ずしもオフショア開発先の言語を話せる人間がいるとは限りません。
通訳としての仲介、他にも海外のエンジニア事情を熟知しているブリッジSEがいることで、交渉を円滑に進めていくことが可能になります。
【デジタルタイランド計画】
タイでは、産業構造の転換や少子高齢化の問題、グローバル社会の機会活用、人材開発強化といった課題に対して、以下の4つの目標を2016年から2025年の最初の10年間で達成することを宣言しました。(デジタルタイランド計画は20年の長期プラン)
・世界15位以内のIT企業育成、GDPの25%以上をデジタル分野にする
・デジタル公共サービスの利用機会均等、全国民のブロードバンド利用、ITUの
ICT Development Indexで40位以内にランクインする
・IT人材強化、ITリテラシーの底上げと国際標準レベルのスキル向上
・デジタル政府化による行政サービスの効率化、国連電子政府指数50位以内
そして、20年の期間でデジタルタイランド計画は次の戦略で活動していきます。
・人材の育成:
民間部門において、デジタル人材を50万人育成し、内10万人はエンジニア、データサイエンティスト、IoT専門家、サイバーセキュリティ専門家等のスペシャリストを育成します。
・デジタル経済化:
製造業の内、中小企業300社を含む25.000社をデジタル化します。農業産業のデジタル化も同時に進め、デジタル関連産業のGDPへの貢献率20%向上を目指します。
・地域コミュニティの活性化:
遠隔地や農村地帯などを中心に約2.5000の村に高速通信インフラを整備、デジタル化による地域社会の生活レベル向上を図ります。
特に、農業・医療・教育分野では、都市部とのデジタル・デバイドが大きい分野の格差是正に注力します。また、障碍者へのデジタル・スキル訓練を実施、雇用機会上昇を目指します。
・イノベーションのエコシステム構築:
国内の7か所でスマートシティ開発を行い、ビッグデータ、IoTなどのデジタル産業への投資拡大を目指します。Digital Park Thailandなどの先進技術集積地を中心に、デジタル関連のエコシステムを生み出します。
タイの基本的な情報や平均単価などを見ていきましょう。
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【タイの基本データ】
国名:タイ王国
総人口:6980万人(2020年)
通貨:バーツ
為替レート:1バーツ=約3.42円
GDP:5018億USD(2020年)
言語:タイ語
最低賃金:約330バーツ(約1129円)/日
携帯普及率:190%(2019年)
インターネット普及率:75%(2019年)
検索エンジンシェア:1位Google 2位Yahoo 3位Bing(2013年)
SNSシェア:1位YouTube 2位Facebook 3位LINE
出典:Most used social media platforms
【オフショア開発データ】
オフショア開発のメリット:
・ITインフラ整備が進んでいる
・仏教徒が多く、親日傾向
・システム開発よりデザイン力に秀でている
・現地向けのSEOに強い
オフショア開発のデメリット:
・ソフトウェア開発には向いていない
・英語が通じないことが多い
エンジニアの性格:
基本的におとなしく、不平不満をあまり言わないが、溜め込みやすい傾向にある
エンジニアの平均単価:
月あたり平均約7万円
【タイの治安は】
タイの失業率は、なんと1%前後で東南アジアの中でも比較的安全な国とされます。爆弾テロ事件が2015年に起こったものの、その後大きな事件もなく、平穏な日常を送れています。
鉄道や地下鉄などの公共の交通機関も発展しており、タイに慣れていない人でも安心して目的地を目指すことが出来るでしょう。
【タイのソフトウェア市場規模とIT技術者数】
2016 年のタイのソフトウェア市場規模は約971億バーツとなり、2014年から約5%縮小しました。国内の開発規模は約500億バーツ、国内販売規模は約775億バーツあり、輸出向け開発規模は約37億バーツです。
また、タイのIT技術者数は、5万人ほど。約6割がソフトウェア開発関連の技術者で、他方・社外フリーランスが47%程度になることからもエンジニアのアウトソーシングが進んでいることが分かります。
タイオフショア開発の魅力を3つ紹介
続いて、タイでオフショア開発を行う魅力を3つ紹介します。
1. 優秀なデザイナー
東南アジアはIT企業が多く、物価も安いことからITエンジニアを大量に安価で確保できる点が人気の理由です。タイも例外ではなく、人件費を抑えながらエンジニアを雇うことが出来ます。タイでは、システム開発系のエンジニアよりもデザイナーの育成が進んでおり、HP制作やソフトウェア開発、ソーシャルゲームの制作に必要なデザイン能力にたけた人材を多く確保することが出来ます。
システム開発系のエンジニアも多くはありませんが確保することは可能ですが、やはりデザイン面の方が強い傾向にあるので、ある程度の育成が必要になる場合もあります。
タイ国民の性格的特徴から、育成しやすい傾向にはありますが、メンタル面でのケアは必要になってくるでしょう。
ITエンジニアを確保しつつ、デザイナーも雇えるのが、タイオフショア開発の大きな魅力になります。
2. 親日家
タイの総人口の95%が、仏教徒です。そのため、日本人との相性がよく親日家も多い傾向にあります。タイは別名「微笑みの国」と言われていることからも分かる通り、穏やかでのんびりとした性格の国民が多くいます。何かしでかしても「大丈夫。気にしないで。」と許してしまうことも多いそうです。
のんびりとした性格から、少々時間にルーズな面も見えますが、スケジュールや仕事量を上手に管理することでコントロール可能です。
コミュニケーションについては、多くの人が会話をしやすいと感じるでしょう。
基本的に話をよく聞いてくれ、感情的に当たってくることはあまりありません。
こちらが何かを言うのを基本的に待ってくれていることの方が多いでしょう。
3. インフラ整備
タイのインフラ整備は、アジアの中でも特に進んでいます。タイ政府はデジタルエコノミー政策を打ち出し、国を挙げてデジタル化の推進を行っているため、都市部のWi-Fi環境は日本よりも整っています。インターネット利用率も年々上昇傾向にあり、開発委託する上で、肝心なインターネット環境についての心配はないでしょう。
インターネット環境がしっかりと整っているのであれば、オフショア開発中の業務連絡や報告の遅れといった心配は少なくて済みます。連絡が途絶えてしまうこともほぼないと言えるでしょう。
タイオフショア開発の課題
上記で紹介しましたが、タイのオフショア開発では、ソフトウェア開発や組み込み系開発よりもデザイン重視のHP制作やイラスト制作、海外SEOに強みがあります。
デザイナーの人材は多いのですが、上流過程から参画できるエンジニア獲得が少ないということが課題とされており、今後のシステム開発系エンジニアの育成が今後のオフショア開発発展のカギとなるでしょう。
まとめ
以上、タイにおけるオフショア開発の魅力について紹介しました。
まだ、安定しない要素も見られますが、デザイン方面の能力値は高い傾向にあります。
人件費を抑えながら、優秀なエンジニアを雇うことを検討中の場合、ぜひタイも候補に入れてみてください。タイでは、特にデザイン能力の高いエンジニアが多いので、参考にしてみてください。