日本のIT技術の進歩は目覚ましいものがあり、国民のほとんどがスマホやパソコンといったデバイスを所持し、インターネット環境を構築しています。普段当たり前のように使用しているアプリやソフトウェアには、開発者がいて日々、様々なシステムやアプリを開発しています。開発者をITエンジニアといいますが、深い知識と技術の習得が必要となる専門職です。
ITの普及と難易度の高さから、日本では、深刻なIT人材不足が問題となっており、これを解決するために海外エンジニアに開発を委託するオフショア開発が進められています。オフショア開発先として注目を集めているのが、多くの日本企業の進出と人件費が安いことからアジアに集中しています。今回は、東南アジアに位置するマレーシアにおけるオフショア開発について紹介していきます。
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【アジアのオフショア開発事情】
1980年代以降に日本企業はコスト削減のためにオフショア開発を始めました。始めは、中国の市場に参入し、事業の拡大や業務効率化に力を入れました。その後、他の国々もオフショア開発先は広がっていきました。オフショア開発先として特にアジア地域の国々が多い傾向にあるのは、なぜでしょう。
その理由は、以下の3つです。
・距離が近い:日本と比較的距離の近いアジア諸国では、時差が少ないため業務進捗上で必要な連絡や相談がしやすいです。また、就業時間もほとんど同じなので、コミュニケーションを取りやすく、急な開発トラブルや仕様変更にもすぐに対応することが出来るでしょう。
・コスト削減:オフショア開発の特徴の一つであり、メリットでもあるのがコスト面。
国によって異なりますが、日本よりも賃金の水準の低い国を開発拠点にすることで、人件費を抑えることが可能になります。一つ注意点として、コストを抑えることばかりに意識が行き過ぎると技術が伴わない開発者のためにもトラブルが増えてしまう可能性があるので気を付けましょう。
・エンジニアの技術力:アジアの国のエンジニアは世界的に見ても技術力が高いため、世界中で活躍することが出来る技術者を獲得することが出来ます。日本国内では、少子高齢化のために技術力の高い技術者を確保することが難しいので、高い能力を持ったエンジニアを獲得できるのは大きな魅力の一つになります。
【マレーシアの雇用制度の違い】
マレーシア人を雇う際には、マレーシアの文化や国民性を理解しておかなければいけません。仕事を進める上で特徴を把握しておきましょう。
マレーシア人は、親切で人懐こく、マイペースかつ楽観主義です。
段取りを組んで作業をする仕事は苦手な傾向にあり、何か言いたいことがあっても強く主張しないという特徴もあります。そのため、変化に気づき、こちらから声をかけてあげることが必要でしょう。
マイペースな性格は仕事上で、時間をかけてでも最後まできちんとこなすという長所に繋がります。チームを組んだプロジェクトを好まないので、個人での開発に能力を発揮するでしょう。スケジュールの管理を徹底することで、納期に間に合わないことを防ぎます。
マレーシア人じゃ、他人に強く言う習慣がないため、部下が間違いを繰り返しても叱りません。何度も同じ間違いをしてしまうので、育成が必要になります。
最後に、休日についてです。マレーシアには年次有給休暇と病欠の際の有給休暇制度があり、通常よりも多くの休みを取る傾向にあります。また、1年を通して祝祭日の休日が多いので、なかなかスケジュール通りに業務が進行しないため、プロジェクトの遅れに注意が必要になります。
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マレーシアオフショア開発の現状
さて、マレーシアオフショア開発ですが、その特徴にはどういったものがあるのでしょうか。マレーシアについてのデータと共に確認していきましょう。
【マレーシアとは】
マレーシアは、東南アジアに位置し、マレー半島南部とボルネオ島北部の二つの地区からなっています。面積は約33万平方キロメートル(日本の面積の9割)で、国土面積のおよそ6割を森林が占めています。マレーシアは多民族国家で、様々な宗教や言語、民族が暮らしているので、文化や生活様式が異なっています。
マレーシアは、積極的に誘致を行い、インフラ整備を整えていくことでめざましい発展を遂げました。オフショア開発におけるマレーシアの特徴として、東南アジアの中では、人件費が少し高めですが、IT企業を優遇する制度が導入されており、人件費というコストが多少上がっても進出するメリットがあると言えます。
【マレーシアのオフショア開発】
マレーシアでは、IT産業の推進のために、国を挙げて誘致を行っています。外国からの企業が参入しやすい様に、MSCステータスの資格発行やタックスヘイブンを指定しています。これについては後に解説します。また、開発言語の多様性はマレーシアにおけるオフショア開発の大きな魅力といえるでしょう。多民族国家の強みを最大限に活かしています。
マレーシアの基本的な情報や平均単価などを見ていきましょう。
【マレーシアの基本データ】
国名:マレーシア
総人口:3237万人(2020年)
通貨:マレーシア・リンギット(RM)
為替レート:1リンギット=27円
GDP:3367USD(2020年)
言語:マレー語
最低賃金:約55リンギット/日
携帯普及率:約140%(2019年)
インターネット普及率:約84%(2019年)
検索エンジンシェア:1位Google 2位Yahoo 3位Bing
SNSシェア:1位YouTube 2位WhatsApp 3位Facebook
【オフショア開発データ】
オフショア開発のメリット:・多民族国家の為、多言語開発が可能
・日本の良いところを取り入れてきたので、親日家が多い
・IT企業優遇制度「MSCステータス」というライセンスあり
・租税回避地であるラブアンの存在
オフショア開発のデメリット:・休日や有休が多い
・マイペースな国民性のため、自己主張が乏しい
・コスト削減が難しい
・無対策だと、離職率が高い傾向にある
エンジニアの性格:おおらかでおおざっぱ。仕事のミスはお互い様ととらえるような感覚で、時間にたいしてもルーズ。休みはしっかりと取り、連絡がつかないことも多い。
エンジニアの平均単価:ひと月当たり10万円前後
マレーシアの開発言語:1位PHP(約40%)、2位Microsoft ASP.NET(約17%)、3位Java(約4%)、4位Lua(約0.5%)、5位Node.js(0.05%)
その他に、PythonやPerl、Rubyがあります。
マレーシアオフショア開発の魅力を3つ紹介
続いて、マレーシアオフショア開発をする場合の魅力を紹介します。聞きなれない言葉も出てくると思うので、しっかりと解説していきます。
1.多言語開発
マレーシアの公用語はマレー語ですが、多くの人が英語も同時に話すことが出来ます。また、海外からの移住者が多い、多民族国家のために英語だけでなく、中国語やフランス語、ヒンドゥー語など様々な言語が使用されます。こういった特徴から、将来的に複数の国に進出したいと考えている企業は、多言語に対応した開発を行っているので、ビジネスにおいてとても魅力的な要素になります。
2.ラブアン
マレーシアの連邦直轄領のサバ州・南シナ海に浮かぶ島で、正式名称「連邦領ラブアン」といいます。ラブアンは、当初リゾート地として人気がありましたが、1990年に制定された「オフショア会社法」によって、オフショア金融センターないし租税回避地として注目を集めています。ラブアンのような地域を「タックスヘイブン」といいます。
【タックスヘイブンとは】
タックス・ヘイブン(Tax Haven)とは、課税が完全に免除されたり、著しく軽減されたりしている国や地域のことで、租税回避地、低価税地域とも呼ばれます。主に税制上の優遇措置を地域外の企業に対して戦略的に設けている国や地域を指し、代表的な場所としてはイギリス領ケイマン諸島、バージン諸島といったカリブ海の島国や、ルクセンブルク、モナコ、アメリカ東部のデラウェア州などが挙げられます。
多国籍企業や富裕層が、法人税や源泉徴収税が皆無に等しいタックスヘイブンに資産を移し、オフショア取引を利用して租税回避するケースが多く、2016年5月に公表された「パナマ文書」では、その利用実態の一部が明らかになりました。脱税行為や利益移転、マネーロンダリング、犯罪・テロ資金隠匿などに悪用されるケースもあります。
3.MSCステータス
マレーシアでは、指定された情報と知識の開発を促進するために「MSCステータス」という資格を情報通信技術事業企業に与えます。このライセンスによって、最大10年間の免税優遇措置や外国人向けのビザの無制限発給を受けることが可能になります。
【MSCステータスメリット】
MSCステータスの取得優遇措置は以下になります。
・最長10年間の法人税の免税
・日本人を含む外国人知的労働者に無制限で就労ビザを発給
・外資規制の撤廃
・マルチメディア関連機器の輸入税免除
特にマレーシアでは、外国人が就労ビザを取得するためにはその法人の資本金・最低50万リンギット(約1400万円)が必要(業種によっては2800万円)になります。また、取得できる人数にも制限があります。MSCステータスを取得していると無制限に発給できる喉絵、とても大きなメリットといえるでしょう。
注意点として、四半期ごとの進捗報告義務と指定された建物への事務所設立の義務が生じます。指定される建物は、IT環境に恵まれていて事務所の大きさも一定基準を満たす必要があるため、立地のいいオフィスビルは賃料が高くなります。
マレーシアオフショア開発の課題
マレーシアオフショア開発における今後の課題は、コスト面といえるでしょう。
平均的に人件費が東南アジアでは高いため、オフショア開発の大きな目的である人件費の削減が行えないという課題があります。近年では、若年層の人口増加と所得上昇により、さらに人件費がかかるため、どういった面でコストを抑えるのかが重要になっていきます。
多言語開発の魅力はとても強いため、今後オフショア開発の流れがどのようにマレーシアに影響を及ぼすのかがカギになるでしょう。
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まとめ
以上、マレーシアにおけるオフショア開発の魅力について紹介しました。MSCステータスとタックスヘイブンという大きな特徴を踏まえて、マレーシアオフショア開発を検討してみてください。
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