ビジネス英語は「相手に伝わること」が一番大事【ビズメイツ株式会社 浅野 貴史 氏】

浅野 貴史 氏 | ビズメイツ株式会社

2000年4月 松下電器産業株式会社 入社(現:パナソニック株式会社)
2003年9月 株式会社ACCESS 入社 ソフトウェア開発本部 係長
2006年11月  同社 ドイツ子会社 プロジェクトリーダ(ドイツ勤務 1年)
2010年8月  同社 デジタルパブリッシンググループ グループ長
2015年4月  株式会社Appirio 入社 プロジェクトマネージャ
2016年10月 Media Do International Inc. 入社 CTO(アメリカ勤務 2.5年)
2021年2月  ビズメイツ株式会社 (Bizmates, Inc.) ITイノベーション推進室 室長、兼 CTO

はじめに、現在のお仕事について教えてください!

ビズメイツ株式会社は、もっと多くのビジネスパーソンが世界で活躍するために、人と企業が成長しあう多様性のある豊かな社会の実現を目指し、グローバルな人材とグローバルな企業の成長支援を目的にサービス展開しています。

グローバル時代を生き抜く企業・個人の成長を支援している我々自身も、フィリピンにある子会社の開発チームとグローバルな開発組織を形成し、アジア圏で開発組織を持つ企業のベストプラクティスとなれるように日々改善しています。

新卒時代の経験から「グローバルな環境」で働くことを求めた

英語

海外で働くようになったキッカケは何かありましたか?

学生の頃から英語には興味があり、勉強もしてきました。しかし、新入社員の時に出張や研修で海外を訪れた際、自分の英語力が通用せずショックを受けました。その時からエンジニアとして腕を磨きつつ、外で活躍するために英語も学んだことで、いつしかアメリカのシリコンバレーで働いてみたいという想いも芽生え始めました。その後は、ご縁があって外資系企業や米国本土での仕事を経て、現在に至ります。

IT

現在、御社の組織には外国籍の方が多いのでしょうか?

当社のフィリピン子会社まで含めたエンジニア社員の4分の3は日本国籍以外です。特にフィリピンの子会社では、フィリピン国籍が多くを占めているので、当社の開発組織は総勢40-45名中の30名ほどがフィリピンの方です。

そのため、当社では国籍関係なくグローバルに活躍できる人材を採用しています。

フィリピン現地の子会社に日本人の方はいらっしゃるのでしょうか?

いいえ、駐在員などは置いていません。コロナの関係もありますが、駐在員という考え方より、相互の人材交流はしたいと思っており、フィリピンから日本に来てもらう、その逆もある、という形で相互理解を深めたいと思っています。

多国籍チームでは「明確で定量的に伝えるコミュニケーション」を心がける

外国籍エンジニアのマネジメントで、気をつけていることは何でしょうか?

「何(What)を作りたいのか」を明確にして、きちんと伝えることを意識しています。作りたいものをいかに効率良く高品質に作れるかが、単純なコスト削減よりも大事だと思っているからです。

オフショアに依頼しても期待するものが返ってこないと聞くことがありますが、それはこちらがオフショア先に伝える能力がなかったとも言えると思います。こちらの要求や受け入れ基準を明確に伝えられなければ、期待するものは当然返ってきません。細かい「What」がきちんと伝われば、「How」の部分である基本的なアーキテクチャは共通して伝えられますからね。

コミュニケーション

外国籍エンジニアのマネジメントで、どのような苦労をされましたか?

定性的なこと、文化的背景が伴うこと、文脈を読み取ることは、やはり伝わらないことが多かったです。なので、今は定性的な部分は伝わらないのが前提だと思って、コミュニケーションをとっています。チームの中では想いの共有や察することも大事だと思いますが、マネジメントにおいては、異なるバックグラウンドでも伝わるようになるべく具体的に、定量的に、伝えてるよう心がけています。

多国籍チームでは言語で苦労することが多いと思いますが、御社はどのような工夫をしていますか?

ビジネスで英語を使ってコミュニケーションをとる際に大事なポイントは「SIMPLE(簡潔)」「POLITE(丁寧)」「EFFECTIVE(効果的)」な英語を使うことです。流暢な英語ではなく、「どれだけ相手にわかりやすく伝えられるか」を意識したコミュニケーションを心がけています。

特に日本企業がグローバル化に必要とする英語は、第二外国語を英語にしている人との接触が多く、流暢さや発音の速さが重視されない場合も多いはずです。それに、英語力と言っても様々で、実際の会話以外にもSlackを用いて文字でもコミュニケーションをとることもあるでしょう。私たちも苦労しながら、自分の表現力の中で相手に分かりやすいよう伝えています。

そして当社では、双方向に歩み寄ることが大事だと考えているため、子会社のフィリピンメンバーとは基本的に英語で意思疎通していますが、フィリピンのメンバーにも、日本語や日本文化について勉強してもらうという取り組みも始めています。

人材確保の壁「英語」を乗り越えるために、フィリピンで開発拠点を設置

英語

日本企業がグローバル化をしていく上で、壁になっていることは何でしょうか?

今後の日本は、どんな組織でも日本人だけのチームの割合が減っていくと思います。特にエンジニアの日本人比率は減少し続け、流入してくる外国籍の方々だけでは補えないと思っています。その場合は当然外国籍の方をチームに入れていくことになり、そういった時代を先取りして当社では準備を進めています。

そして、社内の公用語を何にするかも大事です。当然ですが日本語だけでは集められる採用候補のパイが少なく、英語をエンジニアチームの共通言語として使うのであれば教育も必要になっていくでしょう。私たちは英語圏の国が少ないアジアにいるので、他地域と比較して英語が話せるエンジニアを確保するのが難しいです。そのため、当社は英語を話せる人が多いフィリピンを選び開発を進めています。

5年先10年先もそのまま日本人だけでやっていくのか、やっていけるのか、それが正解なのかは早いうちから考えた方が良いと思います。

日本企業がグローバル化をしていく上で、英語が壁になっている原因は何でしょうか?

日本の英語教育が原因の一つだと考えています。英語が第二言語として確立されているフィリピンでは、幼稚園の頃から英語を見聞きする環境があります。英語を第二言語として使っている他の国でも同じような環境があり、インプットとアウトプットの機会が圧倒的に多いのです。

毎日勉強してインプットをしていても、アウトプットがなければ身につきません。残念ながら日本では日常生活でアウトプットの機会が圧倒的に少ないので、自らそういった環境に浸らないと難しいでしょう。私自身も英語を話さないといけない環境に自分を置くことを信念として、アメリカに行きましたからね。ですが今は、海外へ行かなくてもインターネットを通じて各国の人と交流できます。オンライン英会話をはじめ、様々な英語学習ツールがあるので、そういったツールを利用して、毎日英語を使う習慣を身につけることをおすすめします。

最後に

オフショア

今後の展望をお聞かせください!

企業が成長していくためにはエンジニアの数を増やし、現在のやり方を標準化してスケーラブルな形で適用することが求められると思っています。そのために、まずはグローバル思考を持った人材を確保し、トレーニングも基本的には英語かつグローバル基準で行います。

また当社では、海外でも使われている開発系ツールを用いているため、どのチームにいてもそのツールで開発ができるように使い方を共通化し、エンジニアとしての役割もグローバルな基準で共通化していきます。それらが浸透していけば、我々の成長にも繋がってくると期待しています。

さらに、人材の交流もより盛んにしていきたいと思います。現在は日本とフィリピンだけでやっていますが、今後は日本・海外問わず、開発拠点を増やしていくかもしれません。

今後オフショア開発を検討している企業や、海外で活躍の幅を広げたいと考えるエンジニアにメッセージをお願いします!

企業に向けて:
一昔前はオフショア開発をコスト削減のために利用するケースが多かったですが、現在は優秀な人材を確保するために海外で開発拠点を持ちたいという需要が大きくなっています。オフショア開発の比較は「コスト削減効果」「優秀な人材の確保」「開発効率」など、複雑な方程式でスコアリングする必要があり、簡単なことではありません。

当社を始め、企業が失敗を恐れずにどんどんチャレンジして、そういった方程式を導き出せるような事例が広がっていけば、海外で拠点を持つことが更に広まっていくのではないかと考えています。

エンジニアに向けて:
そういった中で企業と共に個人も成長できると思います。新しい環境で学ぶと新しい学びがあると思いますし、それが海外でチャレンジすることになれば大きな成長に繋がると思いますので、ぜひ成長に向けてチャレンジをしてほしいなと思います。


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