(後編)シンガポールでは「フェアでオープンな環境」を作れ【MOON-X株式会社 塩谷将史 氏】

前編では、塩谷さんのご経歴から、日本のエンジニアの課題感、そして日本でもエンジニア的思考を持つ人々が起業や新しい仕組みづくりをしていってほしいというお話を伺いました。いかがでしたか?

後編では、日本での外国人エンジニアのマネジメントと海外での外国人エンジニアのマネジメントの違いや海外でのゼロイチ経験を持った状態での起業についてなどのお話を伺います。

「日本で外国人と働くこと」と「海外で現地の人と働くこと」は違う

ビジネス

日本で外国人とチームを作る時に感じたことを教えてください!

日本で働く外国人は、日本に来るというその人にとっては大きな決断をして、日本の会社に入っている人が多い。なので、ある程度こちらが日本文化や日本の会社習慣を持った状態でいても、これはこういうものだから慣れてねと言うことができます。もちろん全部日本を押し付けて順応させるのは良くないので、配慮するべきところは配慮します。

むしろ外国人と一緒に働くことになった日本人側を教育する方が難しいと思います。例えば言葉に関して、得意じゃなくても良いんですが、絶対に英語を話したくないという人もいます。そういう人たちに対しても、チームとしてやっていくために色々と工夫をする必要も出てきます。今まで日本人同士で暗黙の了解でやっていた環境に、突然暗黙の了解が100%通じないメンバーが入ってくるので、言葉だけでなく働き方や文化の問題が出てきます。その外国人がよくても、他の日本人メンバーが適応しなければ問題が起きてしまうので、チームとして何がスタンダードなのか、などを作り直していかなければいけません。

海外で現地の人と働く際に工夫されていた点を教えてください!

まず前提として相手が外国人ということは、相手にとっても私は外国人なんですよね。なので、違う文化で育った人同士は基本的に常識が違うということを認識することです。それが認識できるかどうかで、仕事へのストレスが大きく変わってきます。

どうしても日本では、ほとんどの人が似たような文化や生活習慣で育ち、貧富の差も少ないため考え方が同質化する傾向にあります。自分達の常識が正しいと信じ切っているので、外国人の言っていることは間違っていると思い、何とか自分たちの常識を分からせようとして結果的に衝突が起きてしまいます。

日本に来て日本のことを学びたい外国人にとっては日本文化を学ぶ機会になるでしょうが、そうでない人にはストレスでしかありません。しかし、一歩外に出れば私たち自身が外国人です。外国にいるのに日本のやり方を無理に押し付ける形をとろうものなら、誰も言うことは聞いてくれなくなるでしょう。それならば、自分は外国人なのだから、相手と自分で相違があって当たり前と考えた方が楽ですよね。その上で、相手の文化にとっては何が良いのかを聞き、勉強するべきだと思うのです。

そういった意味では、異文化を学ぶことは興味があるかどうかではなく、業務上必要なこととしてやるべきだと思います。

異文化が当たり前、仕事は欧米型のシンガポール

シンガポール

シンガポールならではのプロジェクトマネジメントの苦労はありましたか?

シンガポールは多民族国家なので、異なる文化の人同士が同じチームに存在することが普通です。エンジニアは特にインド人、中国人がが多いですが、その他ヨーロッパや東南アジア、日本人も割といました。どの国の人と仕事をする上でも、やはりお互いの文化へ興味を持つことは重要ですね。

仕事に関しては欧米型なので、ボスが絶対という文化が強いです。部下達は最初の頃は、私が気に食わないことがあるとクビにされると思っていたようで、私の顔色をよく伺っていましたね。それにまつわる印象的なエピソードがあります。

ある日、とあるメンバーと少しお願いしていた仕事について話があったので「話があるから、ミーティングルームに来て」と呼んだのですが、そのメンバーはびくびくしているし、後で聞いたら周りのメンバーにもすごいプレッシャーを与えていたようです。どういうことかと言うと、そのメンバーはクビにされると思い込んだようです。そんな人の呼び方をしてはいけないと別の部下の一人にその後注意されました。それがあってからは、個別に話すとしても、チームや人のいる前で話すようにしています。

また、シンガポールは特に海外からの移住者も多いため、クビになってその後仕事が見つからないと国に帰らなければいけない人もいます。そのため、成果へのコミットメントは非常に高く、何としてでも成果を上げて昇進して、給料を上げたいと思っている人が多いという印象ですね。

マネジメントをする上で大事にしていることは何でしょうか?

個人的に意識していたのは、とにかくフェアであること、それに加えて、透明性・チームワーク・個人の成長を大切にしていました。個人の成長を目指して成果を出してもらうことが大事なんですが、それだけでは周りを蹴落としてでも成果を出そうとしてしまうので、チームワークとのバランスをとりながら可能な限りフェアでオープンな環境を作っていくことを意識していました。

楽天がそもそも会社の数字を社員にできる限り公開したり、社長が毎週朝会でダイレクトにメッセージを出すオープンな会社だったので、そこが好きだと言う外国人もたくさんいました。その影響もあり、彼らも言われたことだけをやるのではなく、「自分がこういうことをやったら、もっと会社のためになる」と様々な提案をしてくれました。このようにポジティブなモチベーションが自然と出てくる環境を作ることが大事だと思います。

楽天退職後、2社の起業に参画

オフショア

楽天退職後、アペルザを立ち上げられた経緯を伺いたいです!

元々海外で起業したいと思って楽天を辞め、日本には帰るつもりはなかったんです。でも、シンガポールで日本から視察にきていた起業家を紹介され、その後も何回か話すうちに、自分と違う経験をしてきたこの2人とビジネスを新しく創っていくのが面白そうだなと感じまして、日本に帰国してアペルザを共同創業し、私はCTOになりました。

楽天時代のゼロイチ経験は、起業する際にどう役立ちましたか?

海外でビジネスやチームを作ってマネジメントをした経験に加え、日本ではなかなか発生しない珍しいこともたくさん経験できたので、特に不確実性に対するマネジメントの力は上がったと思います。

ただ、楽天は規模が大きく、資金力もあり、強力なリーダーシップもある会社なので、自分たちでゼロから作っていく起業はそれとは全く感覚が違いました。

あとは楽天時代の経験から、創業後の早い段階から海外のエンジニアを採用していたことですね。エンジニアは売り手市場で採用が難しかったので、海外のエンジニアを採用することでの採用を成功させました。

その後、御社の立ち上げやCTO養成講座OCTOPASSに参画されたのですよね?

アペルザ創業から約3年半で辞めまして、それと入れ替わるタイミングで、楽天のシンガポール時代の同僚だった代表とMOON-Xを立ち上げました。

楽天や起業での経験によって、自分が当たり前に解決できることでも他の人には困難なことが結構あると感じたんです。自分が経験したことを伝えたり、一緒に考えるだけでも、その人にはすごい助けになると考えていた時にちょうどOCTOPASSの話を友人経由で紹介され、企画から携わるようになりました。

OCTOPASSでは、現役のCTO等講師陣がオンライン講座をやっていまして、受講生とケーススタディ等を用いて共に学んでいます。私は教えるプロではないですが、自分の経験を自分1人のものから、10人に伝えていけば10倍の効果がありますし、それが伝播していけばどんどん大きくなっていく。そこに楽しさを感じています。

最後に

海外へ活躍の幅を広げていきたいと考えている企業や個人に対してメッセージをお願いします!

私が社会人になった20年ほど前と比べると日本でもかなり海外の人と近くなりました。インバウンドや日本で働く外国人も増えています。しかし、まだまだ日本の職場環境は異文化から刺激を受ける機会は少なく、その中で気持ち良く仕事をしているだけでは非常にもったいない。旅行や趣味だけではなく、ビジネスとしても世界を舞台に考えてどんどん外へ出ていってほしいです。もし海外に行きたいと思うなら1分も躊躇せずに行くべきですし、その背中を押してあげられる環境になっていけば良いなと思います。

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