MECE的に平易な表現で、現場の温度感も伝わるように【株式会社ハイブリッドテクノロジーズ 高村 亙 氏 / T. H. 氏 】

高村 亙 氏 (執行役員)

神奈川県で庭師からIT業界へ転職。
鉄道業界、通信業界、医療業界、IoT、アンドロイド、iOS等多種多様な開発プロジェクトのPG、TechLeadを経験。
その後、アンドロイド、iOS、WEB開発、HRTech等さまざまな開発プロジェクトマネジメントを経験。
2021年より現職。ベトナム開発チームのプロジェクトマネジメント統括を行う。

T. H. 氏(デザイナー兼PM / ご本人の希望によりイニシャルで掲載)

京都大学を卒業後、大手教育事業会社に入社、マーケティング・広告制作に従事。その後アプリプロデューサーとしてアプリ開発/運営を経験した後、2019年に渡越。ゲームディレクターを経験後、2020年からHYBRID TECHNO CAMP CO., LTD.(現在:ハイブリッドテクノロジーズと合併)にてProduction Directorとして開発のクリエイティブマネジメントを行う。

はじめに、現在のお仕事について教えてください!

高村さん:
弊社は大手企業からメガベンチャー、スタートアップ企業まで、常時50ほどのプロジェクトを進めています。案件の大きさは問わず、お客様のDXをお手伝いしていきたいと考えているので、DXに関わることであれば基本は何でもやっています。

T. H.さん:
私自身はUXのマネージャーをしており、デザイン周りを見ることが多いです。新規事業でアプリを作るという大型案件で、デザインのディレクションや実作業を行っています。高村がお伝えしたように弊社はお客様のDX推進に挑戦しており、組織作りや組織拡大にも力を入れています。

スピードと価格はオフショア、でも品質は日本

オフショア

海外でのエンジニアマネジメントで大切なことは何でしょうか?

高村さん:
弊社はお客様が日本企業ということもあり、スピードと価格はオフショアで、UXや品質は日本クオリティを目指しています。その上での課題は技術力よりもコミュニケーション力です。
オフショア開発で品質が悪くなってしまう理由は、要求をしっかり伝えていない、もしくはしっかり伝わっていないからだと思っています。例えば「これ確認しておいて」とメンバーに言った時、日本では「テストまでして確認をする」と暗黙の了解で伝わりますが、ベトナムでは言葉通り「見るだけ」と受け取られてしまいます。
MECE的にローコンテクストで伝えること、「前後の文脈から察して」ではなく、分かるように伝えることがとても大切なことだと思います。

T. H.さん:
弊社は現在日本人とベトナム人しかいないのですが、価値観が全然違うなと思います。例えば、ベトナムでは残業してでも仕事を終わらせる文化がなかったり、人前で責められるのが良しとされない文化だったりするので、そこは日本人が配慮しないといけない部分ではありますね。
加えて、使う言葉も違います。我々の間にベトナム語と日本語を話すブリッジSEを入れても、ブリッジSEは日本語ネイティブではないため細かい部分が伝わらないことがあります。また、お互いに英語が達者なわけでもないので、そういった場合には誤解のないように英語もあまり使わず、なるべく平易な日本語でゆっくり話すことを心がけています。

現在はオンラインでマネジメントをされているとのことですが、現地のメンバーとコミュニケーションはどのようにとっているのでしょうか?

T. H.さん:
基本はオンラインミーティングやチャットでコミュニケーションをとっています。ミーティングでは、ブリッジSEが通訳もしてくれることが多いです。

高村さん:
弊社のベトナム人マネージャーは日本語が堪能で、多くが技術的な知識も兼ね備えているので、マネージャーが通訳をしながら話し合いを進めていく場合も結構あります。

御社では、ベトナム人で日本語が話せるメンバーがかなりいるのでしょうか?

高村さん:
日本語が話せるスタッフは多いです。弊社に在籍している500人ほどのベトナム人のうち、100人程度は日本語が話せます。

リモートマネジメントでの苦悩、現地を訪れてからはコミュニケーションが円滑に!?

リモート

お二方は現在日本にいらっしゃるとのことですが、ベトナム現地でマネジメントをされたこともあるのでしょうか?

高村さん:
年に数回、出張で現地に行きます。

T. H.さん:
私は2年半ほどホーチミンで仕事をしていました。

実際に現地でメンバーと対面で会った前後で、その後のマネジメントに影響はありましたか?

高村さん:
私は大きく変わりました。入社してから最初の数ヶ月はオンラインのみでマネジメントをしていました。その時は自分の言いたいことがなかなか伝わらず、相手の言いたいことも伝わってこないという状態だったのですが、一度現地に行って色んな会話をした後は向こうの想いや空気感も分かるようになったのでコミュニケーションが円滑になりました。

T. H.さん:
私はホーチミンに移住してから弊社で仕事を始めたので、日本に帰ってきてからも印象は変わらないです。2年半もベトナムにいると文化や風土も染み付いているので、ベトナムはこんな感じなんだなと日本に居ながらも分かった状態でマネジメントしています。

現在リモートワークでマネジメントをされているとのことですが、オンラインならではの課題はありますか?

高村さん:
オンラインだと現場の温度感を伝えるのが難しくなる点です。
期限と品質の観点で、期限の点で言えば、提出期限の温度感を正確に伝えなければ、納品が遅れてしまう可能性もあります。
品質の点では、品質が悪くなってしまった時に、例えばオフラインであれば一緒に隣の席で実際にアプリを動かしながら品質の悪い部分を説明できるのですが、オンラインだとその空気感を伝えるのが難しくなります。

若くて優秀なベトナム人エンジニア、その技術探究心とスピード感に驚愕

エンジニア

海外エンジニアとのマネジメントで印象に残っているエピソードはありますか?

高村さん:
ある日、お客様と新規サービスの打ち合わせをしていて、実現したい内容が現状の技術だと厳しいという話になりました。その後、あるベトナム人エンジニアとランチをしながら、その新しいサービスは出始めのクラウドサービスを使えばうまくいくかもしれない、という話になったんです。ただ、お互いに触ったこともなかったので、後で調べてみようと考えていました。しかしその日の夕方、そのエンジニアが、もうクラウドを組み込んでサービスを作っていたんです!その技術探究心と実装スピードには衝撃を受けました。結果、その取り組みはお客様にも喜んでいただき、すぐにサービスインすることになりました。

T. H.さん:
弊社は日本企業のお客様が多く、要件定義のような上流工程から携わっています。その際、日本独特の商習慣やベトナムではないようなプロセスがあっても、ブリッジSEがそれを理解していて現地メンバーに伝えていることに驚きました。それを見て、技術力だけではなくビジネスや他の文化の理解までできる組織が強いのだと感じました。

お二方はどのようにマネジメントを学んでいきましたか?

高村さん:
今はアジャイルでスピード感を持ってやっていくスタイルなので、分からないことは本やwebで学び、学んだことをチーム内で共有する形をとっています。また開発だけではなく、実践的な練習を日常的に取り入れています。

T. H.さん:
弊社はお客様もプロジェクトも多種多様で、高村が申し上げたようにスピード感があります。なので、まずはやってみようという文化があって、実際にプロジェクトをやりながら、日々の業務を通じて学んでいきました。

ベトナムでのエンジニア採用市場の現状を伺いたいです!

高村さん:
昔は求人を出せば人がたくさん集まったのですが、今は昔ほど採用が簡単ではなくなりました。理由の一つは物価のインフレによって、採用コストが上がったからです。
しかし、それでも日本人を一人採用するよりもベトナム人10人を採用する方が楽だと思います。ベトナムでは、エンジニアの需要も供給もしっかりありますし、Golang、PHP、Pythonなどの新しい言語を扱えるエンジニアがたくさんいます。ただ国民全体が若いので、40歳以上のエンジニアや、C言語やPerlなどのレガシーな言語を扱えるエンジニアは少ないです。

お二方が考えるベトナムで開発をする魅力を教えてください!

高村さん:
今はコロナ渦でリモートワークを導入している企業も多く、リモートならベトナムも東京も生産性に変わりはありません。ベトナムで開発をする方がスピードや費用は確実に優れていますし、今こそ広まってほしいなと思います。

T. H.さん:
若くて優秀な人材が揃っていることです。平均年齢も中央値で30歳ぐらいで、出生率も2を切っておらず、今もなお人口ボーナスを享受している国です。時差も2時間なので、海外とはいえ時差で苦しむこともないと思います。

最後に

東南アジア

今後の展望を教えてください!

高村さん:
弊社は会社の規模を拡大していくために、日本人もベトナム人も増やしていこうと思いますし、ベトナムの現地法人に日本人を増やしていこうと考えています。

T. H.さん:
この業界はどうしても上流工程を日本が、下流工程をベトナムが請け負うことが多く、日本人がベトナムを下請けだと下に見ているところがあると思います。それでは人間関係はうまくいきません。日本とベトナムで役割が違うだけであり、そこはチーム意識を持ってやっていくことが大事だと思います。人が増えてくるとその問題は顕在化しやすいので、この時期にチームの一体感が崩れないように意識していきたいです。

今後海外に進出したい企業・個人に向けて、メッセージをお願いします!

高村さん:
これから日本のエンジニア不足はより深刻になっていき、日本の内製だけではDX推進にはついていけません。なので日本には海外での開発が必要です。企業様には、経験が大事なので、スモールスタートからでも海外での開発を経験することをお勧めします。エンジニアの方々には、一緒に開発を推進していける人がいれば嬉しいなと思っています。

T. H.さん:
海外での開発を検討している企業様へは、不安もあると思いますが、ラボ型のようにエンジニア、テスター、コミュニケーターを人月で借りることができますし、低リスク低コストでお試しスタートもできるので、ぜひ一緒にできたらなと思います。海外に興味があるエンジニアの方には、海外で働くのは楽しいですよ とお伝えしたいです。また、今はリモートで場所は関係ないですし、ベトナムは治安も人柄も良いので、検討されていたらぜひベトナムに行ってみてください。


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