日本は、若者不足とIT人材不足によって、国内の人材だけではIT業界への供給量に限界が来ています。そんな中、日本と真逆で若者が溢れ、IT人材もどんどん生まれている国があります。その一つがベトナムです。
日経XTECH(2017)によると、同国は国を挙げてエンジニア育成に取り組んでおり、その成長の原動力となっているのが日本企業のオフショア開発市場です。そして、文化庁(2018)によると、日本語学習者の21.4%がベトナム出身であり、中国(31.9%)に次いで地域別2位になっています。日本語を学ぶ人々が多く、かつエンジニア育成が盛んなベトナムは、今後も日本の成長にとって要の存在であることは言うまでもないでしょう。
関連資料:
日本語学習者の出身国・地域別の内訳(出典:文化庁 平成29年度日本語教育実態調査の結果について)
ベトナムのIT技術者倍増計画、日本には朗報?(出典:日経XTECH)
今回は、ベトナムでオフショア開発企業を立ち上げ、現在はNitro Tech Asia Inc.で社長を務める磯目さんから、海外メンバーをマネジメントする苦労、ベトナムのオフショア開発の今後、これから海外進出していく企業に向けてのメッセージをお送りします。
磯目 真也 氏|Nitro Tech Asia Inc.
静岡県沼津の高校を卒業し、地元漁港にて鮮魚事業に従事。
2007年エンジニアへのキャリア転換を図り、東京の開発会社にてモバイル向けウェブサイトの開発に従事する。
2010年からはキャリア公式の電子書籍、動画サイトの開発と運営保守に従事。
2012年にベトナム・ホーチミンに渡り、BSEとしてオフショア開発に従事後、活動の拠点をダナンに移し、2018年にNitro Tech Asiaを立ち上げる。
漁業からエンジニア転職、そして海外開発拠点の社長に
漁業からエンジニアに転職したきっかけは何だったのでしょうか?
元々、卒業した商業高校ではITに関する勉強をしていました。なので、魚市場を辞めて今後のキャリアを考えた際、自分にとって馴染みのあるITを選び、地元のITスクールに行ったことで、その後ITエンジニアのキャリアを歩むようになりました。
その後は東京で働かれた後、ベトナムに行かれたんですよね?そのきっかけは何だったのでしょうか?
ITエンジニアに転職した後は、東京の開発会社でモバイル向けのウェブサイト開発や電子書籍向けのアプリ開発等をしていました。普通のエンジニアよりもマネジメントサイドに行きたいと思ったタイミングで、ベトナムでブリッジSEを探しているという声があったので、それがきっかけでベトナム・ホーチミンへ行きました。
現在はどういったお仕事をされているのでしょうか?
社長というポジションで会社の運営・エンジニアの雇用をしており、案件のブリッジSEも担当しています。ベトナムに来てからあっという間に9年経ちますが、渡航した当初から仕事はあまり変わらないですね。
海外メンバーをマネジメントする苦労
ベトナムで9年間も海外メンバーをマネジメントされてきた磯目さんが、大変だったことは何でしょうか?
苦労することは、やはり日本人との考え方や過ごしてきた文化の違いですね。一番印象深かったのは、ベトナムに来た当初仕事のストレスで物に当たることがありました。それを見たスタッフから「さっきのアクションは非常に良くない」と指摘されたことです。ベトナムでは、ミスをした本人に対して直接暴言を吐いたりせずとも、その怒りを物に当たるのは本人に行うのと同じことだというのです。その時に、日本とベトナムでは「怒りを表すこと」に相当な温度差があることを知りました。この出来事は、その後の仕事やベトナム生活での自分の意識を変えるきっかけになったと思います。
マネジメントサイドに行こうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
日本でエンジニアの仕事をしていた時、自分はエンジニアとしてできる方だと感じていたのですが、自分よりもできる人はたくさんいて、その人たちと競争するのは大変だなと思いました。その時、たまたま携わったプロジェクトでマネジメントサイドまで関わった際、案件をうまく進めることができて、楽しかったのです。それが成功体験にもなり、マネジメントサイドに挑戦してみたいと思うようになりました。
海外メンバーと仕事をする上で大切にしているポイントとは?
バックグラウンドが違うのが前提で、日本人基準で考えないことですね。例えば、彼らの中では普通でも、日本人から見たら良くない仕草や行動があります。
これはベトナム人だけではなく、私が今まで仕事をしてきた他の国の人にも言えることで、彼らが自分とは違う環境、商習慣の中で過ごしてきたことを理解しなければいけません。
仕事上では感情論で指示をせず「私はあなたに何を求めていて、何ができていないのか」を論理的に話すことが大事です。
逆にそれをできない場合は、自分自身に落ち度があると反省します。
相手のバックグラウンドを理解しようとリスペクトすること、感情論ではなく論理的な会話を心がけるということが大切に今でも変わらないポイントです。
海外のメンバーと働く中で、出てくるニーズはありましたか?
プライベートと仕事をしっかり分けたいということは皆が強調することですね。その境界が曖昧になるような場合、業務内容や時間外労働に関する雇用契約の更新が求められます。
双方が納得して行うべきであるという認識のもと、彼らは合理的な判断をします。
ベトナムではIT人材の需要が高く、無職期間に対するネガティブイメージも少ないため、会社が理不尽な要求や待遇を行った場合はすぐに退職してしまうので、常に労働環境の改善を意識しなければいけません。
そのようなことで揉めたり、トラブルになったことはありますか?
弊社はそのポイントを認識しているので、根性論でスケジュールを決めないようにしています。例えば、7時間働けるエンジニアを10人抱えているのであれば、基本的には1日に70時間工数が進む範囲でしかスケジュールは作れません。
もし残業や休日出勤が発生する場合、それは会社と開発担当者のどちらの問題であるのかもはっきりとさせた上で進めます。
ベトナムのオフショア開発の今後
御社を立ち上げてから、オフショア開発で感じている課題はありますか?
海外に出てくる日本エンジニアが凄く少ないことですね。私は人と話すことやマネジメントも好きなエンジニアでしたが、そういう人はまだたくさん日本国内にいると思います。言語や文化が違って大変と思っていたけど実際に住んでみるとなんとかなる、という具合に海外生活の容易さに拍子抜けする人も多いと思います。幸いにもベトナムは非常に治安がよく、ベトナム人から英語コミュニケーションのマウンティングもされません。(笑)
どんどん海外に挑戦してみる日本人エンジニアが出てくれば、嬉しいですね。
もし、それに該当する人を海外へ送り出すサービスや日本にいるベトナム人エンジニア・留学生をこちらへ紹介してくれるようなサービスが流行ってきたらぜひ使いたいと思っています。
海外進出時にマインド面で壁を感じる人に何か一言お願いします!
なぜ踏み出せないかをもう一度考えて欲しいです。たしかに東京にいた方が新しい技術に触れる機会は多いと思いますが、その他言語以外にあなたが思う問題とは何でしょうか。経験として海外へ出てみたら面白いと思いますよ。
ベトナムで9年間もエンジニアのマネジメントされて、感じていることはありますか?
海外のエンジニアって、日本人に比べると「適当、責任感がない、納期が直前でも定時に帰る」という印象が凄くあると思いますが、自分はその印象をあまり感じていないです。特にストレスはありませんし、皆さんが思っているより、海外で開発をやるのは難しくないと思います。日本より良い環境で生きていけるチャンスでもあるので、ぜひ挑戦してみてほしいです。
最後に
海外エンジニアの活用を検討したり、オフショア開発を検討している企業へ一言お願いします!
グローバル化と言われ始めてからだいぶ時間が経ちましたが、未だに多くの日本企業が国内でなんとかしようとしているイメージがあります。また、海外進出してくる企業も、時間と資金をかけて準備される場合が多いのですが、私的には「言葉が通じない」だけで、まずは試してみる事が大事だと思います。ぜひ開発拠点としてオフショアを選択肢に入れてみてください。
ベトナム・ダナンのオフショア開発 Nitro Tech Asia Incへのお問い合わせは、株式会社デザインワン・ジャパンへご連絡ください。
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