活気溢れるベトナムで、異なる価値観の人々と働く魅力とは【株式会社スクーティー 掛谷 知秀 氏】

掛谷 知秀 氏 | 株式会社スクーティー

大学卒業後キヤノンに入社。一眼レフカメラの電気設計に従事。前職の株式会社セプテーニでは、広告関連システムの開発にプレーイングマネージャーとして携わる。2012年からベトナムに渡り、Septeni Technologyの立ち上げに参画。2015年に株式会社スクーティーとScuti Co., Ltd.を創業。ベトナムとのオフショア開発事業や、東南アジア市場向けスタートアップなどの事業を推し進める。開発者として、ブリッジとして、PMとして、経営者として、顧客として、100件以上のオフショア開発プロジェクトに参加。2020年、ASEAN AWARD受賞。

はじめに、現在のお仕事について教えてください!

ベトナムに開発拠点を持ち、オフショア開発サービスを提供しています。お客様は全て日本の企業様で、システムの規模にもよりますが、ベトナム現地の開発チームで要件定義から開発、運用まで一貫して対応することが可能です。

ソフトウェア開発自体はもちろん日本でも出来ますが、日本国内ではエンジニア不足によって採用したくてもなかなか採用に至らない企業様がたくさんいらっしゃいます。そこで、弊社はベトナムのエンジニアリソースを活用してソフトウェア開発を行うソリューションを提供している会社になります。

製造業からIT系エンジニアへの転職、そしてベトナムへ移住。

御社のエンジニアはベトナム人だけなのでしょうか?

そうですね、日本人は僕一人です。社内でのコミュニケーションは基本的に英語で、日本語を話せるスタッフとの会話では日本語を使っています。

エンジニアになられたきっかけを教えてください!

正直、初めは特に理由はなかったです。大学生の頃は将来のことについてあまり深く考えていなかったため、なんとなく理系を専攻した後メーカーに入り、製造業のエンジニアをしていました。ただモノづくりをするといった面でエンジニアの仕事は楽しいと実感していました。

そんな中で、当時働いていたキヤノンの同僚とビジネスができないかという話をしていて、一緒にウェブアプリケーションを作ってみたんです。そのビジネス自体は上手くいかなかったものの、そういった活動を通して作ったものをすぐ世に出せるというところに面白さを感じ、IT業界に魅力を感じました。そこから転職をして、現在に至ります。

ベトナムとはいつ頃からご縁があったのでしょうか?

初めてベトナムに来たきっかけは前職での海外駐在です。僕は前職では広告関連のシステム開発をしていたのですが、その会社がベトナムにソフトウェア開発用の子会社を立ち上げることになり、その立ち上げのためにベトナム駐在の辞令をいただきました。

労働観や人生観、思考法も全く異なるベトナム人のマネジメント方法

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海外でエンジニアをマネジメントする上で気をつけていることはありますか?

—– コミュニケーションについて
日本人同士でのコミュニケーションよりも意識して伝えたいことを言語化し、なぜそれが必要なのかのWHYを意識して伝えるようにしています。なおかつ、重要なことは同じことでも3回ほど別の手段で伝えるようにしています。やはりどうしても言語の壁があるので、伝わったと思っていても伝わっていなかったということは往々にしてありますからね。

—– ベトナム人のマネジメントについて
ベトナム人の管理はベトナム人に任せて、僕は極力、管理者層に要望を伝え、具体的な指示はマネージャーからメンバーに出してもらうようにしています。なぜかというと、やはり彼らとは労働観や人生観が結構異なるからです。例えば、ベトナム人は日本人以上に家族との時間を大切にする傾向があります。それに加えて、家族の範囲が広く、日本では家族と言えば兄弟や両親ですが、ベトナムでは祖父母はもちろん、叔父叔母やいとこも家族という意識が強いようです。なので「叔父さんの具合が悪いので休みます」ということもあるんですよ。

そういった違いはバックグラウンドが違う分、僕が完全に理解することは出来ないと思うので、結論としてベトナム人はベトナム人に管理してもらうようにしました。社長の役割としては、価値観や育った環境の違いを理解し、それらを考慮した上でお互いが働きやすいような環境を作っていくことが大切だと思います。

会社立ち上げ時に苦労されたことはありましたか?

まず僕はベトナムの法律の専門家ではないので、ベトナムの法律に従って何らかの手続などをする必要がある場合には、弁護士やコンサルタントに相談していました。ベトナムでは法律で明確に定められていないような部分があるんですね。そのような法律に関わるアドバイスを各所に求めたときに、弁護士、コンサルタント、法務担当社員の全員が違うことを言っているというようなことがよく起こり、そういう状況下でも社長として最終的な判断を下さないといけないのは非常に難しかったです。

また、ソフトウェアのライセンスに関するものや(ベトナムにはコピー品や偽物がたくさん出回っています)、賃貸契約に関するトラブルなど、挙げだしたらきりがないほど苦労はありました。

海外での初仕事はなんとかなる、ではなんとかならなかった。在住10年目の今振り返る、当初の苦労とは。

業務面で当時苦労されたことはなんでしょうか?

言語面での苦労に加えて、最初はベトナムのことや、外国人と一緒に仕事をするということについて何も知らないまま来てしまったので大変でしたね。なんとかなると思っていたのに全然ならなかったんです。(笑)ソフトウェア開発では要件を開発チームに正しく伝えて、その要件通りに実装されることが必要なんですが、要件そのものが伝わらなかったり、専門的な部分を英語で伝えるのに苦労しました。通訳もいるんですが、彼らの能力もピンキリで、専門的な会話になると伝えられなかったり、会話のところどころに矛盾が出てきたりしたので、技術的で、かつ、重要な部分は通訳を介さずに伝えるようにしていました。

あとは技術的な部分に関しても、僕の想像と差分があり、思っていたよりできる部分とできない部分があったんです。最初のプロジェクトではソースコードレビューなしで彼らに任せて進めていて、僕は動作確認だけしていたのですが、後で蓋を開けたらとんでもないソースコードの書き方になっていたというのは当時反省していたことですね。

採用に関して大変だった点はありますか?

プレーヤー層の採用は比較的苦労していないんですが、管理者層の採用は難しいですね。ベトナムは平均年齢が若いので、経験のある管理者層のパイがそもそも小さく、その中でスキルとカルチャーのどちらにもマッチする人材はなかなか見つからないです。これに関しては今でも苦労しています。

外国籍の方と働く上でのマインドセットはありますか?

ベトナムに来た当初はあったんですが、もうベトナムに10年も住んでいるので今は日本の方が海外のような感覚になってしまいました。(笑)妻もベトナム人なのでベトナムでの感覚が普通になっています。

ただ、国籍問わず、人脈はなるべく作るようにしていますね。こういう仕事をしていると企業経営者や起業家に会える機会が多いので、なるべくネットワーキングの場に参加し、人脈を増やせるようには意識しています。

人口、インフラ、市場、教育。日常的に目に見えて景色が変わる刺激的な国・ベトナムの魅力

海外で働くことの魅力を教えてください!

日本人が日本にいるだけだと絶対に気づかないような視点や価値観が、海外に来ると実感として得られます。ビジネス上の新しい発見になることもありますし、特にベトナムのような新興国ですと、市場自体が伸び盛りで、中の人たちも若く前向きなので、エネルギーをもらえます。

社会インフラに関しても、ベトナムは今まさに鉄道を作っていて、目に見えて景色が変わってきています。このような急激に発展している環境で仕事をするのはとても楽しいなと思います。人口と経済がみるみる発展していくことを実感できるのは、日本にいるのとは心情が違いますね。

ベトナムでのエンジニア市場の動向について伺いたいです!

ベトナムにはソフトウェア開発者が大体40万人ほどいると言われていて、年間5万人ほどの情報系学科専攻の卒業生がいます。ただ全員が即戦力になれるわけではないので、年1〜2万人ほどのITエンジニアが生まれているというイメージです。大学教育ではIT系の教育に特化していて、情報系を専攻している学生の割合が日本の7倍にもなっています。

また、オフショア開発でいうと、従来はソフトウェア生産工場のように発注側がかっちりとドキュメントを作成しその通りに開発するといった「開発コストを下げる目的」で使われることが多かったんですが、最近は「IT人材不足を解決する目的」で使われることが増えています。お客様の要望も、言われた通りにすることを求められるわけではなく、システム全体を丸っと作ることを期待するといった、仕事への期待値が変わってきているように感じます。

そして、AIやブロックチェーンのような最先端のハイテクノロジーに対応できるエンジニアも増えてきていますね。

最後に

今後の展望は何でしょうか?

まずは既存のオフショア開発事業をもっと規模を拡大したいと思っています。今は(従業員数が)50人くらいなんですが、今年の8月くらいを目処に100人体制に持っていくことを目標としています。1、2年後には200人規模ぐらいにはしたいですね。

それと同時に、元々は自分たちのサービスを作りたくて始めた会社なので、ゆくゆくは自社プロダクトを作り、そのサービスを使った人たちの生活を一変させられるような事業を作っていくということを並行してやっていきたいと思っています。

海外へ活躍の場を広げていきたい企業・エンジニアにメッセージをお願いします!

日本にいるだけだとなかなか得られない視点、気づき、価値観などが海外にいると見えやすくなります。そうすると今度は日本という国を客観的に見ることができるようになるでしょう。今までビジネスを日本国内でしか考えていなかったものが、市場をもっと広げて考えられるというメリットがあります。そういった意味で、海外で働くというのはとてもエキサイティングなことだと思うので、少しでも興味があれば海外に出てみて欲しいなと思います。


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