加藤 彰則 氏 | Vitalify Asia
2005年 Vitalify(東京都渋谷区)にデザイナーとして入社。
当時HTML標準化が叫ばれ始めていた中でコーディング業務を多く行いながら必要にかられてプログラミングも対応していた。
エンジニア時代は特にJavascriptが好きで当時からPrototypeJSや自作のフレームワークで今でいうSPAを作ったりしていた。
フロントエンドの開発をしていたことから(今で言う)UXデザインにも興味があり、またVitalify Asiaが設立したこともあり、オフショアでの開発も増えPM/WEBディレクター業務を担当し始める。
主に広告・エンタメ系の開発案件PMとして日本本社にてVitalify Asiaと一緒に開発を行う。2013年くらいに思い立ってベトナムへ移動しVitalify Asiaに転籍、現在ベトナム在住9年目。
好きな言葉は “It’s easier to ask forgiveness than it is to get permission” -Grace Hopper-
はじめに、今のお仕事について教えてください!
弊社はベトナムのホーチミン市に設立して13年目、現在はラボ型のオフショアでWEBやスマホのアプリケーション、機械学習を利用したソフトウェアの開発をしております。お客様の業種は絞っておらず、スタートアップから超大手企業のR&Dまでコンシューマー向けサービスを中心にプロダクトオーナーと直接の開発をしています。弊社の社員は150名ほど、その内100名程度がエンジニアで9割以上がベトナム人です。
従来の細分化されたアサインをやめて、ブリッジPM制度を導入してシンプルなチームに
エンジニアになろうと思ったキッカケを教えてください!
私は学校も音楽関係でしたしずっと音楽が好きだったんですが、当時自分で作った音楽を発信するために自らサイトを作って公開していたのがWebとの出会いでした。その後、当然趣味程度の音楽だけでは生活ができないので趣味でやっていたWEBサイト作成、多少のPerlやPHP経験を活かした仕事を探して就職したのが当時小さなWEB制作会社だった今の会社です。
海外のエンジニアマネジメントでどのような苦労をされましたか?
私の社会人としてのキャリアは当社がベトナム法人を設立した13年前から、16年中13年がベトナムに関わっていて社会人になってからベトナムと関わっている時間の方が圧倒的に長いんです。なので、外国人だからどうというのはないですね。日本人でも色んな人がいるように、ベトナム人にも色んな人がいます。ただ、大きく見たときには、品質やスケジュールへの考え方、ゴール設定の仕方などいくつか文化的に違うところはあるので、そこに気を遣っています。
日本とベトナムでは、どのように考え方が違うのでしょうか?
仕事での責任範囲がその一つです。ベトナムはジョブ型っぽく仕事を考える人が多いので、自分のポジションの責任は負いますがそれ以外はやりません。日本では自分の責任範囲でなさそうなところでもやれと言われればやる場面もありますが、そこはベトナムでは違います。
また仕事においてのゴール設定をシンプルに捉える傾向があるので、想定外のことが起きると目の前のことで頭がいっぱいになってしまうことも多いです。経済成長国なので給料が上がり続ける状況ですが、目標や品質について考える部分の成長が追いつかないなと感じることもあります。もちろんベトナムも南北広いので、あくまでホーチミンで仕事をしてみてのイメージですが、そういった考え方の違いがありますね。
そういった考え方の違いに対して、どのような工夫をされていましたか?
ベトナムオフショアには特有のカルチャーがありまして、小さいプロジェクトの中にもBA、PM、BrSE、エンジニア、テスター等たくさんの人が入っています。それぞれの責任範囲をあまり広くせず、それをマネージャーがパワーでまとめていることが多いです。
弊社はそれをやめて、BPMというポジションを定義しました。Bridge Project Managerの略です。BPMが要件定義から参加し、案件進行と品質の責任者となってもらいます。要するに責任範囲を広げました。更にテストの実施自体はエンジニアに責任をもたせ少しづつ自動化を進めていてテスターを基本的にアサインしません。
プロジェクト・品質管理の問題を制度から変えていったんですね。
100人に満たない会社だった頃は私や社長で全体が見えたので、プロとして作るなら品質に責任を持つのは当たり前だという空気を作りながら各チームを見ていました。ただ規模が拡大してきて、細かいところまで見れなくなってきたのでワークフローやポジション毎のJobを明確化し組織化を進めていっています。
責任を持たせると仰っていましたが、エンジニアの方は制度の変化についてきているのでしょうか?
ちゃんと今後のキャリアややろうとしていることの正しさについて説明して理解してもらいながら一緒にやると案外ついてきてくれます。もちろんただ理不尽に責任が重いだけだと感じさせればさっさとやめてしまいますので、そこは最大限気を使っています。
自身の激しい働き方を反省し、働いて良かったと思える組織に
海外でのエンジニアマネジメントで印象に残っているエピソードはありますか?
私自身は元々日本で広告代理店さんの仕事をやっていまして、CM公開前などは徹夜も多かったし、土日も出勤してるというようなあまり正しくない働き方をしていたんです。当時ベトナム法人を買収したばかりのころ、仕事を同じようなスケジュール感で委託したときには当然その働き方に耐えてくれませんでした。
その中でも夜中まで仕事に付き合ってくれて、納品前はオフィスに寝泊まりまでして提案した機能を一緒に面白い!と言いながら仕事を最後まで付き合ってくれたエンジニアもいました。その一人が現在弊社の技術責任者です。残業や徹夜が正しいと言いたいわけではありません。ただ、当時は「ベトナム人エンジニアは仕事が残ってても全部ほっぽりだして定時で帰っちゃうよ」とよく聞いていたのですが実際には全然違う人たちもいたのでイメージだけで決めつけてはいけないな、と思うようになりました。
マネジメントをどう学びましたか?
何かから学んだというよりは、自分で色々な仕事をしている内に学びました。先ほどのエピソードでも触れましたが、元々かなり激しい働き方をしていてそれについて来れず日本時代にも辞めてしまう人が多くいました。その時の自分は良いマネージャーではなかったし、当時のメンバーには本当に申し訳なかったという想いがあり、今は働いて良かったと思える組織作りをしたいと思うようになりました。
もちろん本を読んだり、セミナーに行ったりもしていました。ドラッカーの「真摯であれ」という言葉はありきたりなのですが好きです。人を騙したり不幸にさせながら儲けてやろう!というビジネスはしたくないので、お客様にもスタッフにも関わって良かったと思える会社を目指すようになりました。
マネジメントをサポートしてくれるメンターがいたら、当時の加藤さんは使っていましたか?
会社がお金を出してくれるなら、食いついていたと思います(笑)私自身、会社の勧めでマネジメントのセミナーには何度か参加させていただいて、色んな人の経験や知識を聞く機会があったのはとてもありがたかったですし、その後のマネジメントにも活きましたからね。
御社ではどのようにマネジメントを教育されていますか?
マネジメントとは結局例外処理がメインなので場面場面でのやり方、考え方があるので、それを教えるのが難しいなと思っています。日本で勉強・経験したことがそのまま使えることもありますし、ベトナムのカルチャーとして受け入れられないこともたくさんありますからね。
ただマネージャーになるとそれまでと視点が大きく変わります。雇われる側から会社運営側の目線でも考える必要がありますよね。マネージャーになってもプレイングマネージャーである場合が多いので、自分の業務を持っている状態でマネジメントもしなくてはいけない。目線の切り替えができないままマネージャーになってしまうと、目の前にある自分の仕事をこなすことしか考えられないようになってしまいますからね。そういったことに気づくための教育は重要だと思います。
充実したベトナム生活と今後の展望
加藤さんにとって、ベトナムはどのような場所ですか?
私は生まれも育ちも仕事も東京で、ホーチミンに来るまで一度も引っ越しをしたことがありませんでした。私にとっては初めてのホームタウンじゃない場所、初めての一人暮らしの場所です。10年近く暮らしていて、もはや好きとか嫌いとかを通り越してしまった感じがします。昔は色々と不便したけど、最近は便利になって生活に困ることも殆どなく自然体で暮らせる街だと思います。本当に住みやすい街・国だと思います。
今後の展望を教えてください!
お客様にもスタッフにも関わって良かったと思ってもらえる会社にしたいと思っています。規模の拡大も大事ですが、それ以上に息の長い仕事がしたいですね。現在は日系企業のサポートをメインにやっていますが、日本語の仕事だけにこだわる必要はないと思っているので、今後は現地企業や日本以外の企業のサポートもできたら良いなと思っていますし少しづつそういった相談も増えています。
最後に
今後海外に進出したい企業・個人に向けて、メッセージをお願いします!
最近、「日本はもうダメだ」みたいな風潮が強すぎる気がしています。ですが、海外から見ても日本は大きな国ですし、残念なところはどの国にだってあります。海外に数年出ることで日本の良い・悪いところを再認識できますし、日本の価値は何かを客観的に見ることもできると思います。特に個人の方で海外に出たいと思っているなら、難しく考えずに一年でも来てみれば良いんじゃないかなと思います。なんとでもなりますから。
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