エンジニア不足の日本と成長著しいインドネシアの架け橋に【株式会社Jobwher 森川悠希氏】

成長著しい東南アジア諸国の中でも、特に注目を浴びている国の一つが「インドネシア共和国」です。外務省によると、インドネシアの人口は2.70億人を超え、世界第4位の規模。国民の平均年齢は29歳と若い労働人口の比率が非常に高いこともあり、経済成長率は2011-19年で毎年5%を超える新興国です。

また、インドネシアのメリットとして、英語力の高い優秀なIT人材を安いコストで確保することができる点もあげられます。英語教育に積極的なインドネシアでは、都市部の人々を中心に英語を話せる方が多いことに加え、教育省はICT教育も推進しています。またインドネシアの物価は日本の3分の1程度であり、日本に比べるとコスト面でも有利です。時差も2時間しかないので、地理的なハードルもそこまで高くないでしょう。そういった理由もあり、インドネシアがオフショア開発拠点として注目が集まっています。

インドネシア

出典:
アジアの労務コスト比較、意外に大きい賃金水準の地域差|日本貿易振興機構(JETRO)
インドネシア共和国基礎データ|外務省

今回は、株式会社Jobwherでセールスとプロジェクマネージャーとして活躍されている森川さんから、海外メンバーをマネジメントする際に意識するポイント、会社とご自身のこれからについてお話いただきました。

森川 悠希 氏|株式会社Jobwher CMO
大阪大学在学中の2019年よりJobwherのプロジェクトに参画。その後2020年3月の株式会社Jobwher設立に携わる。同社では当初、インドネシアIT人材と日本企業のクラウドソーシングサービス「Jobwher」において、日本企業に対するセールス・マーケティングを担当。2020年後期、同社がオフショア開発サービスを開始したことを受け、ブリッジPMとしての活動を開始。現在はマーケティング活動と並行し、インドネシア人エンジニアをマネジメントするオフショア開発PMとして活動している。

学生時代からサービスを立ち上げ、オフショア開発をサポート

御社に入社された理由を教えてください。

学生の時からインターン生として関わっていたからです。今も弊社の兄弟会社として提供しているSUGEE Kansaiというサービスに携わりました。関西の高度人材の方、IT関連の技術を持っている方、日本で起業を考えている海外の方をサポートするものです。当時から社長にはお世話になっていて、SUGEE Kansaiのサービスの立ち上げの次に、新しいサービスを立ち上げる際に創業メンバーとして立ち上げに1年ぐらい携わっていました。それを引き続きやるのが自然な形でした。

御社の事業内容を教えてください

弊社の事業内容は主に2つあります。まず、海外のフリーランスエンジニアとオフショア開発を考えている企業を繋いで、日本企業が直接海外のエンジニアにソフトウェア開発を委託できるようなプラットフォームを作っています。現在はそれに加えて、日本企業から委託案件を受ける、オフショア開発エージェントとしての事業があります。そのどちらにも関わっていて、ソフトウェア開発委託プラットフォームでセールスを担当、それと並行してオフショア開発のブリッジマネジメントを行っています。

ビジネス

エンジニア領域は元々バックグラウンドがあったのでしょうか?

弊社に携わるようになってから勉強を始めました。それまではエンジニアとしての実績も経験もありませんでした。

オフショア開発マネジメントの苦労

オフショア開発に携わる際に、技術面や言語面でも苦労されましたか?

英語でエンジニアとやりとりをしていますが、英語に関してはそんなに問題ではありません。しかし、一番難しかったのは、細かい仕様に関して、伝えているにも関わらず、理解されきっていないことがあるという点でした。一つ一つは細かな違いですが、それによって機能として実装されるものが使いづらくなってしまいます。例えば、ボタンクリックが1回で良いのに2回必要になっているとか、何か重要なアクションの前に確認の通知がないなどです。細かい齟齬が重なると、最終的な完成物のユーザービリティに問題が生じます。

そのような問題に対してどのように改善していきましたか?

意識していることは2つあります。ひとつはエンジニアに対しても、ユーザーフローとビジネス上での用途を擦り合わせることです。作る際に実際のユーザーがどういう動きをするのかイメージできていなければ、仕様書だけ作って、その通りに作ってくださいといってもできないことはあります。弊社で重視しているのは、アジャイルに何度も改善しながらやっていく方法です。実際のユーザーはどんな人で、どういうアクションをして、何を実現したいのかを擦り合わせていきます。日本の方だと見ただけでわかるものでも、海外の方だと言語も習慣も違うので、丁寧に擦り合わせていくことが大事だと思います。

もう一つは、あまり会話を当てにせず絵を書いて渡すこと、ダイアグラムやユーザーフロー、画面の各構成要素を、画面や画像ベースで話すことが大事だと思います。自分もインドネシアのエンジニアも英語は母語ではありません。コミュニケーションがとれたとしても齟齬があったり、言葉にしていなかったところで伝わっていなかったり。リモートであっても、毎日会議を設定して、画面を見せながら、画面上で会話することが必要だと思っています。テキスト作成に時間を割くよりは画面を見せながら、頻繁に会話することが大事だと思います。

コミュニケーション

そういったマネジメントは自分で学んでいきましたか?

弊社はそもそもオフショア開発を若い会社なので、弊社内で知見が蓄えられていなかった状態で始めました。そこで、PMBOKなどフォーマット化されているものを見ながら、どう弊社の現状に合わせていくかを、エンジニアリーダーと相談しながら改善しながら進めていって、弊社なりのプロジェクト運営フォーマットを作っていきました。これからプロジェクトを進めていくことで、どんどん改善していきたいと思っています。

PMのスキルアップができるようなメンターのサービスがあれば使ってみたいと思いますか?

弊社の状況を見ると、使ってみたいです。プロフェッショナルがいて、その人の作った流れで進めているわけではなく、手探りで進めているので、少しでも客観的に見てもらって、アドバイスをいただければ、単純に良い機会だと思います。

オフショア開発の課題感

クライアントはどういった理由で御社のサービスを使われていますか?

サービスのMVP開発や、その後の第2段階の開発、それからサービスの多言語化という点でご利用いただいている場合が多いです。ユーザーさんのリアクションを見ながら概念検証をスピーディーに回したい時の選択肢としてオフショアを選んでもらえるようになってきていると感じます。そのため、海外の方がアジャイル開発に慣れているので、そのあたりでオフショア開発を使っていただければ、ウィンウィンになると思います。

海外のエンジニアはどういった理由で御社のサービスに登録していますか?

インドネシアでは人口増加と同時にエンジニアが増えています。それに対して失業率が高止まりして雇用機会がなかなか増えていません。物価で言うと日本の3分の1で、日本の仕事を得られるだけでも嬉しい状況があります。国内に仕事がないので、日本の物価で払ってもらえるとすれば、ぜひ登録したいということで登録してもらっています。

インドネシアにフォーカスした理由を教えてください。

元々弊社にインドネシアに繋がりのある社員が多かったのがきっかけです。オフショア開発のメインスポットであった中国やベトナムよりも、物価が安く、人口が増えていてスキルレベルも高い。日本企業にとってもコストメリットがあります。ユニコーン企業がどんどん出ているような成長著しい国でもあります。日本ではエンジニアが不足しているのに対してインドネシアには求職者がたくさんいます。その両国を繋げることでメリットになるのかなと思ったので、インドネシアに注力してきました。

インドネシア

これからの展望

会社としてのこれからの展望を伺いたいです!

会社として目指しているところでは、Jobwherをより多くの方々に使って頂いて、Jobwherを通して日本企業がもっと手軽にソフトウェア開発できるように様々なコラボレーションを生むことです。インドネシアのエンジニアをプロジェクトに入れることができて、コストも抑えることができる。何度も概念検証を行っていく。社会にある課題を解決するようなスタートアップ的なアイデアをJobwherを通して、実現する手助けをする。大切にしているところ。ユーザービリティを高めて、プロモーションして、色んな人に使ってもらえるようにしていきたいです。

個人としての展望はありますか?

個人としては、プロジェクトマネージャーとしてレベルアップしていきたいです。インドネシアの方々と仕事をしていて、日本人と性格も近く、親しみやすく感じます。日本人のエンジニアと働いたことはありませんが、心地よくプロジェクトできています。新米プロジェクトマネージャーでもあるので、エンジニアがもっと気持ちよく仕事ができるような環境を整えていきたいと思っています。

最後に

海外へ活躍の幅を広げていきたい企業に向けてメッセージをお願いします!

まずオフショア開発を使ってみたいという方には、どんどん使っていってほしいです。そしてオフショア開発を使うかためらっている人に対して、不安や懸念点が暗黙的なところから来ている場合も多いと思います。東南アジアの方は品質が悪いと思われることもありますが、全然そんなことはありません。人の性格なので、真面目な人は真面目にやってくれます。プロジェクトマネジメントをしっかりできていれば、日本人と変わらず気持ちよく働けます。ぜひ気軽にオフショア開発を使ってみていただければと思います。


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