大事なのは、いかに伝言ゲームを少なくして情報のギャップを減らすか【株式会社クライド 西山 晃司氏】

日本国での外国人労働者数は約172万人。増加率は大幅に低下したものの、過去最高を更新しています。厚生労働省(2021)によると、情報通信業における外国人労働者数も増加傾向にあり、昨年度は71,284人と前年より5.5%も増加していることが分かります。

オフショア
関連資料:令和2年度外国人雇用状況|厚生労働省

国籍別に見てみるとどうでしょう。隣国である中国が47%と圧倒的な人数であり、次いで韓国・ベトナム・フィリピンと近隣諸国が続いています。深刻なIT人材不足である日本からすると、情報通信業における外国人労働者の増加は重要なポイントです。

 

外国人労働者
関連資料:令和2年度外国人雇用状況|厚生労働省

今回は、証券マン・クリーニング屋・開発エンジニアを経て、現在はフィリピンのオフショア開発拠点をマネジメントされている西山さんから、オフショア開発を成功させる鍵、人材の流動性が高い市場でのマネジメント方法に加え、今後の展望なども伺いました!

西山 晃司 氏 | 株式会社クライド

慶應義塾大学卒業後、新卒で大手証券会社に営業職として入社。取引先の社長に誘われクリーニング屋に転職し、店舗指導、経理、発注などを行う。2010年より株式会社ワークスアプリケーションズにエンジニアとして入社し、EC開発部門で大手企業向けパッケージシステムの開発に携わり、上流から下流までを担当した。2017年から上海に駐在し、現地の子会社でシニアマネージャーとして、業務フロー改善や採用など組織のマネジメントに携わる。2020年より株式会社クライドでフィリピンの開発子会社の運営やエンジニアマネジメントを担当している。

証券マンからクリーニング屋、そしてエンジニアに

エンジニアになった経緯を教えてください!

大学では金融を専攻していて、卒業後は証券会社のリテール(個人営業)として岡山県に配属されました。1年ぐらい飛び込み営業をしていた時、お客様だったクリーニング屋の社長に誘われて転職。大きな会社から出て挑戦しようと思い、1年半ほどクリーニング屋で洗濯や事務方の作業などをしていました。

その後は地元の神奈川に戻り転職活動を始めまして、目に止まったのがワークスアプリケーションズの第二新卒採用でした。そこでは、入社後半年間の研修を乗り切ればコンサルタントかエンジニアとして配属されるというプログラムがあって、私はコンサルタントになりたかったので応募をしました。研修が終わって、希望配属先はコンサルタントで出したのですが、エンジニアとして引き抜かれまして、そこからエンジニアとしてのキャリアが始まったというわけです。

エンジニア

海外との関わりを持たれたキッカケは何でしたか?

2010年にワークスアプリケーションに入社して、3年間はECサイトの開発をしていました。日本人エンジニアだけでは人材不足になると考えた会社は、2014年頃から海外拠点を作り始めて、中国やインドの優秀なIT人材を積極的に採用し始めたんです。そのタイミングで私が部署を移動しまして、そこが中国人・インド人と仕事をする部署だったという形です。

当時は海外の方とどのように仕事をされていたのでしょうか?

当時はマネジメントをしていたわけではなく、一エンジニアとして彼らと関わっていました。基本はメールや社内チャットで、たまにSkypeを繋いでミーティングをしていましたね。

多国籍な環境だったと思いますが、国によって対応の違いはありましたか?

いいえ、インド人と中国人で違いを感じたことは特にないですね。共通しているとすれば、曖昧なことは通じないのではっきりと伝えることが大事です。しっかり伝われば、優秀なエンジニアだったので開発速度はとても速かったですよ。

現在は会社全体に関わり、人事・採用にも携わる

現在はどのようなプロジェクトに関わられているのでしょうか?

今は個別のプロダクトに深く入っているというより、オフショア開発の複数プロジェクトを見ていて、進捗状況やトラブル対応などを確認しています。また、フィリピンの会社の運営として人事・評価・採用などにも関わっていますし、日本本社ではCTO室の室長として、開発チームを横断した課題への対応を行っています。

プロジェクトマネジメント

採用というお話がありましたが、採用時に意識しているポイントはありますか?

給与レンジと応募条件のバランスを状況に応じて調整しています。市場と比較して提示する給与が低すぎたり、条件が厳しすぎても応募は減ってしまいますからね。また、送られてきた履歴書は、まずフィリピン人のマネージャーに審査してもらったり簡単なテストを課してフィルタリングをしています。その後に面接をしていますね。

面接ではどのような要素を見ていますか?

技術的な質問に対する反応・回答で判断していて、シニアクラスなら概念的な部分も抑えているかを重視しています。また、マネジメントの経験や過去に会社を退職した理由なども聞いていますね。

いかに伝言ゲームを少なくして情報のギャップを減らすか

ずばり、オフショア開発成功の鍵は何だとお考えでしょうか?

それは「伝言ゲームを少なくすること」ですね。究極的にはプロジェクト担当者が、現地の開発者と直接話すのが望ましいです。ご想像つくと思いますが、間に人を挟めば挟むほど伝えたい情報の正確さが低くなります。さらに外国語を挟むのであれば余計にその正確さは失われ、少しのニュアンスの違いが全く違う認識を生むわけです。

唯一、間に挟んでいいのは言語も専門用語も理解できるブリッジSEで、少しでも情報のギャップを少なくすることが大事だと思います。

コミュニケーション

やはり英語で直接コミュニケーションがとれれば、情報のギャップも少なくなりそうですね。

日本人は第二言語として英語に親しみがある方だと思います。大卒であれば英語の読み書きは頑張ればできると思いますし、今は翻訳ツールも発達しています。日本語ができる外国人エンジニアを探すよりも、英語ができる日本人エンジニアの方が探しやすい・育成しやすいと思いますよ。

またITの世界は英語で一次情報が発信されているので、英語でアクセスできるかどうかはエンジニアとしてすごく大事なことです。

フィリピンにオフショア開発子会社を設立した理由は何でしたか?

現地では英語が日常的に使われており、コミュニケーションがとりやすいからですね。ブリッジSEは現地語と日本語が話せるエンジニアが条件になるので、フィリピンなら英語と日本語を話せるエンジニアです。オフショア開発拠点を選ぶ際に色んな場所を調べましたが、ベトナム語やタイ語を話せるエンジニアよりも英語を話せるエンジニアの方が遥かに見つけやすいと思い、フィリピンを開発拠点に選びました。

人材の流動性が高いことが前提のマネジメント

今までのご経験から率直に、マネジメントの重要性をどうお考えでしょうか?

適切なマネジメントがされていない環境では、各人が同じ目標に向かえず、組織が成り立ちません。海外ではそういった状況下では、従業員は簡単に辞職・転職を検討しますし、エンジニアなら尚更転職が容易なので(マネジメントが)ちゃんとしていないと辞めちゃいますね。

そういった人材をどのように引き留めるのでしょうか?

辞めるからには理由があるはずなので、簡単には引き留めません。例えば、他の会社からオファーをもらっている時、その方のキャリアを考えてそちらが良いのあれば無理には引き留めません。逆に代わりを探す方がお金がかかるなど、どうしても辞めてほしくない時はカウンターオファーも考えます。そういった悩みや考えを事前にキャッチするためにも、しっかり1on1などでヒアリングすることが大事だと考えています。

ビジネス

ヒアリングというのは、定期的に対話されているのでしょうか?

その辺りの情報把握は現地のマネージャーにお願いをしていて、アラートが上がってきたら私の方からも面談したりしています。そういったモニタリングのシステムは作っていますね。

キャリアや会社に対する悩みは上がってくるものですか?

なんだかんだ不満はどこかで漏れるものです。大体は黙殺されるのでしょうけど。なるべく拾えるように、対話だけではなくアンケート形式にしてみたりと試行錯誤はしています。

リスペクトは態度で示し、物事はハッキリ伝える

外国人エンジニアと関わり始めた当初、どのような苦労を経験されましたか?

まずは自分の言語能力が低かったので、なるべくミーティングは避けて文字や資料ベースでやり取りをしていました。ただ慣れてきたら、英語の方がハッキリ、シンプルにコミュニケーションをとれることに気づきました。日本語のように物事を曖昧に言えるほどの英語力が無かったということも理由の一つなんですが。

また日本と違うのは、彼らが総合職ではなくスペシャリストとして働いていて、自分のポジションが確立されているので、アサインするプロジェクトは各人の専門性を考慮する必要があります。

外国人エンジニアとやり取りをする際、大事にしていることはありますか?

絶対に見下してはいけないということです。日本人の中には、未だに東南アジアの人々を見下すような人がいます。それなのに欧米の顧客にはペコペコするみたいな。そうではなく、一エンジニアとしてリスペクトを持って接してほしいですし、そこをおざなりにする人には辞めてもらっています。

どういった部分でリスペクトしているか・いないかが分かりますか?

会話している際の態度に出ると思います。例えば、何か伝えようとした時に向こうが理解してくれなかった時に、呆れるような態度を取るんですね。そうではなく、根気強く伝え続けたり、向こうがキャッチアップする時間をとることでリスペクトの気持ちが伝わると思いますね。

オフショア

外国人エンジニアのマネジメントで印象に残っているエピソードはありますか?

上海に駐在していたときなんですが、ある中国人エンジニアの女の子が周りより開発速度が遅かったり、ソフトウェア知識が乏しかったりしていたことがありました。それもそのはず、周りは大学でコンピュータサイエンスを勉強してきた人ばかりの中で、彼女はハードウェアの畑出身だったんです。でも彼女にひたすらAWSベースでのSREの知識を教え込んだ結果、すごく成長して、すごく感謝してくれて、転職していきました(笑)

1対1であれば、マイクロマネジメントになりすぎない程度に進捗を管理して、何か聞いてきたらすぐに何でも答えるという結構つきっきりの教育をしていました。でも彼ら彼女らの成長していく姿も見えたので嬉しかったです。

今後の展望

今後の展望を教えてください!

会社としては、オフショアのサービスを拡大しています。先ほども述べたようにコミュニケーションを重視しているので、フィリピン人と英語で仕事ができることが弊社の強みであり、英語だからこそオフショア開発が成功できると思っています。是非ご検討下さい。

西山さんが所属する「株式会社クライド」の情報はこちらから

個人としては、将来は台湾に住みたいと思っています。常夏で暖かいですし、台湾人が好きなので。また、外国で働けるスキルが既に身についているエンジニアとっては、リモートで働ける環境が整ってきている昨今は、住む国すら選べる時代になってきていますからね。

最後に

今後海外に活躍の場を広げていきたいと考える企業や個人にメッセージをお願いします!

企業に対して。今は国内人材不足とグローバル化によって、海外のエンジニアを使わざるを得ないと思います。少しでも早く踏み出してノウハウを貯めることと、良いオフショア開発のパートナーを探してほしいなと思います。

個人に対しては、一エンジニアとして。今はエンジニアにとって良い時代になってきています。スキルを上げて、外国語をできるようになって、日本という国だけに囚われず、自分の好きなことをしながら稼いでいく。そういうエンジニア仲間が増えたら良いなと思っています。


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