働きやすい環境が、成果を出すチームを作る【海外マーケティング企業経営者 島田裕一氏】

新型コロナウイルスのパンデミックによる消費者行動の変化によって、インターネット経済の勢いを加速させています。中でも注目されている東南アジアのインターネット消費は、2025年までに現在の3倍である3,000億ドル(約31兆3700億円)にまで達するとしています(出典:SankeiBiz)

特に伸びているのはインターネットショッピングとしていて、2025年までに1,720億ドル(約18兆9200億円)に達する見通しで、これは従来予想の1,530億ドル(約16兆8300億円)からの大幅な上方修正をしています。(出典:SankeiBiz)

東南アジア

関連資料:
東南アジアのネット消費3倍予想 25年3000億ドル、コロナが利用促す(出典:SankeiBiz
Southeast Asia’s internet economy to hit $300 billion by 2025: report(出典:REUTERS

今回は、東南アジア諸国での拠点立ち上げ・運営を経験され、マーケティング企業2社の海外事業の全体統括をされていた島田さんから、法人立ち上げを何度も経験された中で感じた価値観の違いや海外メンバーをマネジメントする際に意識するポイント、東南アジアにおけるweb業界の動向と今後をお話していただきました。

島田 裕一 氏|海外マーケティング企業経営者
海外現地におけるマーケティング領域のコンサルティング業務を主に実施。 2006年よりアウンコンサルティング株式会社において、大手通信/メディア/人材業界などの集客戦略策定および実行支援を行う。その過程において、デジタルマーケティング黎明期におけるオンライン上での顧客獲得を推進。 その後、海外事業統括責任者として、同社海外全拠点(シンガポール/タイ/台湾/香港)のCEOとなり、現地および外資系の大手企業を中心に、小売/教育/金融/旅行業界などのグローバルマーケティング支援を行う。 2016年に株式会社エフ・コードに海外担当執行役員として参画。インドネシア/タイ/台湾を中心に海外事業を統括し、現地大手航空会社やメガバンクなどのマーケティング戦略策定に従事しながら、日本企業のグローバル事業開発/海外営業先開拓支援/越境EC支援なども手掛けた。

新卒2年目で沖縄法人所長に、3年目でバンコク法人代表に

バンコク

新卒としてアウンコンサルティング株式会社へどのような理由で入社されたのでしょうか?

私がアウンコンサルティングに入社したのは2006年で、当時から検索エンジンを活用したデジタルマーケティングを国内で展開していました。私が就職活動をしていた大学生の時、内定を頂いたのが重厚長大なメガバンクとマザーズ上場して間もないベンチャー企業だったんですが、ベンチャーの方が若いうちに色々と経験できるので、早めに勝負をかけたいなと思い入社しました。

入社されてからどのようなキャリアを歩まれたのでしょうか?

当時のアウンコンサルティングは40人の社員に対して新たに20人新卒が入るという拡大期でして、新卒への期待が凄かったです。20人中私を含む4人が営業として配属され、最初の3ヶ月はゴリゴリ営業をしていましたね。そこからはコンサルタント見習いとして、大手通信会社のオークション事業をアシストしたり、当時普及が急加速していたADSLのデジタルマーケティングなどに1年ほど携わっていました。

渡航

1年目から大手企業のコア事業に携わっていたんですね。
その後は沖縄やタイで法人の代表を勤めていたと伺いました。その時のお話もぜひお聞きしたいです。

当時、社内でエクセルの単純な作業や広告の設定作業などのシンプルな作業を、東京のコンサルタントがやっていたんです。そこで東京の3分の1のコストである沖縄で、デジタルマーケティングのサポートを担う拠点を作ることになり、私は東京で仕事を取りまとめて沖縄に渡すという2地域を繋ぐ役割を担当していました。役員の方からその仕事を評価していただき、23歳の時に沖縄法人の所長に任命されまして、1年ぐらい那覇に住みながら20人ぐらいのメンバーをマネジメントしていました。

その後、日本語関係なく数字を扱うだけの仕事ならば日本人である必要もなくなり、24歳の時にはタイのバンコクへ現地法人を作りました。最初は5人のタイ人と日本人私1人という環境で始まりまして、設立当初は全然英語もタイ語も話せませんでしたが、やらざるを得ない状況だったので、3ヶ月で英語を、6ヶ月でタイ語を話せるようになりましたね。1年半で会社は30人ぐらいの規模に拡大して、日本のオフショアだけではなく現地の会社にも営業ができるようになったので、自分自身で売上を立てられるようになりました。

2年目で国内拠点の所長に、3年目で海外法人の代表をやられていたんですね。
4年目以降は更に多くの海外拠点を統括されていたのですよね?

バンコク法人が拡大した後、一度日本に戻って1年弱マネージャーをしていたんですが、当時業績が傾いていた香港法人へ行ってほしいと言われたので、2011年に香港へ行き現地法人の代表になりました。結果として香港法人はV字回復を遂げまして、その後はシンガポール、台湾、そしてタイも兼任することになり、31歳の時には4カ国の責任者になっていました。その当時は1ヶ月で4ヶ国を周る様な海外を飛び回る生活を1年ほど続けていまして、飽きてきた頃に現在勤めている会社の社長のお誘いを受けて、マザーズ上場企業から20人ぐらいのベンチャー企業に参画をしました。

海外メンバーをマネジメントする中での苦労

マネジメント

様々な国の現地法人立ち上げや運営に携わってきた中で、文化の違いやビジネス感覚の違いでどういった部分で苦労されましたか?

仕事に対しての考え方が違うことですね。東京では「仕事のために人生がある」とハードに考える人が周りには多かったのですが、私が関わった沖縄やタイでは「あくまで仕事は人生の一部である」と考え、生活に満足していたらそこまで無理をして働く必要は無いと考える人が多かったです。

私は新卒でベンチャーに入るような人間なので、仕事をするか死ぬかぐらいの考え方でした。2009年ぐらいまで沖縄やタイの人にも、なぜ東京の人みたいにガツガツ仕事をしないの?なぜ仕事があるのに深夜まで働かないの?という価値観を押し付けていました。しかし、ある時メンバーの中で不満が噴出しまして、タイ人の方からこの人とは働きたくないと言われたんです。その時に、それぞれの価値観に合った形でマネジメントをしないとうまくいかないと思いましたね。その辺りの意識の擦り合わせは重要です。私がタイにいる目的は「彼らをガツガツ働かせること」ではなく「成果を出すこと」なので、メンバーが働きやすい環境を整えることは大事だなと感じました。

働きやすい環境を整えていく際、何を基準に考えていたのでしょうか?

仕事に対して何をモチベーションにするのかを考えていました。私がマネジメントしていた4ヶ国で考えていくと、まず香港では経済条件、つまり給料が超重要です。台湾では、クラスメイト・部活のようにチームが一丸となって楽しく働けるかどうかが大事。タイでもチームが重要とされているものの、お金にはかなり厳しかったです。ただ香港はキャリアを築く上で給料が大事であるのに対して、タイでは目先に入るキャッシュが大事というイメージです。そしてシンガポールの場合は、優秀な外国人とプライドを持って働けるかが重視されています。各国がそういうものだと割り切っていました。

香港では給料が市場価格を超えるようにインセンティブを設定していましたし、台湾の場合はチームランチを増やしたり、タイでは給料を市場価格以上に設定した上で、チームを作ってそこのリーダーが尊敬されるように組織を作っていました。シンガポールでは小さいチームを作って、その中でそれぞれを尊敬できるようにしていました。仕事を辞める人の多くは、上司が嫌だから辞めます。そこで、いかに自分との距離を近くするか、もしくはマネージャーと自分の距離を近くするかを意識していましたね。

コミュニケーション

東南アジアでは人材の流動性が高いと伺ったのですが、島田さんはどう感じられていますか?

どの国でも20代は人材の流動性が高くて当然だと思いますよ。それに雇用の流動性は経済発展に欠かせないと思っているので、それは許容するべきですし、それを前提に組織設計を考えるべきです。20代で新卒として特定の業界、特定の会社、特定の職種に就き、残り40年をずっとそこでフィットするような会社に出会える方が珍しいと思います。例えば、香港では20代で4-5社は移動しますし、その上で30代をどこで過ごすかを考えます。感情的にも論理的にも雇用の流動性は必要です。日本人はどこかの組織にずっといることが美徳だとされていて、辞める人をネガティブに見がちですが、現地の価値観に合った組織設計をしていかないともったいないと思います。

海外人材をマネジメントする際に重要なポイントを教えてください!

まずはそもそもローカルメンバーが本当に必要なのかどうかですね。例えばインサイドセールスにしても、現地で雇用するのではなく、日本から英語で行っていくのではダメなのかなど、考え抜くことが重要です。そして現地に会社作って現地で人を雇う場合は、その理由を明確にしておくことで、上手くいかなかった時に原点に立ち返ることができます。

その上で、現地の人材を採用する時に一番重要なのは「戦略・組織設計から考えて、そこに合う人材を集めること」で、人材に合わせて組織設計していてはダメです。戦略ありきで人材を採用しないと、成功した時の再現性は無いし、失敗した時も振り返れないですよね。

東南アジアのweb業界の現在と今後

オフショア

エフ・コードでは何をされていたのか、具体的に教えてください!

エフ・コードでは海外事業全体の責任者を担当していました。事業はwebマーケティングが中心で、中でも海外へはSaaS領域の自社製品を持っており、海外の大手航空会社やメガバンク、旅行代理店に対して、webサイトのUXを改善するソフトウェアを提供していました。ただ、それらの市場が未成熟であり、webサイトのUXを改善しようの前に、そもそもwebを使った予約システムができていなかったりするので、国によって受け入れられる度合いは違いますね。

ここ数年で東南アジアでもweb業界が盛り上がっているように感じているのですが、まだwebサイト領域の技術は広まりきっていないのでしょうか?

テックは概念が広まった後に、実際に先進的な企業へ導入されて、その事例を元にマジョリティに導入されるんですが、それぞれの段階に3-5年のスパンがあるんです。例えば、大手ECサイトであるLAZADAのような先進的なサービスは、10年前に立ち上がってやっとマジョリティに広まりました。私たちのお客様は一般的なメーカーや銀行のwebサイトであるため、LAZADA等の先進的なサービスが普及した3-5年後にwebサイトが導入されるようになるんです。

そして、概念が広まった後もツールだけではなくて、導入するベンダーとそれを選定する発注者側の人が必要です。そのために人材の教育も必要ですし、凄く時間はかかります。あとは単価もありますね。私たちのソフトウェアは月30万円の1年契約とかを結びます。そのぐらいの価格でweb最適化できるような企業は日本なら1万社以上ありますが、タイに100社も無いと思いますし、フィリピンやインドネシアも同じような規模感です。

IT

東南アジアでのテック領域の課題感について教えてください!

市場が小さいことですね。私たちが東南アジアに進出した理由は、競合となるセールスフォースやオラクル、アドビなどの欧米大手企業が入ってきにくいと思ったからです。以前ロンドン出張に行った時、ロンドンでは弊社の競合が50社ぐらいあったんですが、インドネシアでは5社ぐらいしかありません。大手が来ない理由は単純に市場がなく、市場を作るほどのポテンシャルも今は感じていないので、優先順位が低いからなんです。とはいえ特にインドネシアなどは人口も多く、市場が急拡大しているので、その流れにあわせてウェブマーケティングも成熟していくと思いますけどね。

島田さんが今後やっていきたいことを教えてください!

現在は個人で海外進出や、海外現地企業のマネジメント、海外現地でのウェブマーケティングを支援していますが、個人的には経験のある東アジアや東南アジア以外の地域の経験を深めていきたいですね。具体的には市場の大きいアメリカ/中国や、新興国であるナイジェリア/キューバあたりに住み、今までの知見を活かしながらマーケティング活動を実施してみたいと考えています。

最後に

海外へ活躍の幅を広げていきたいと考えている企業に向けてメッセージをお願いします!

海外で事業を興した起業家の本や記事を見て、胸が熱くなったり、自社の事業を当てはめてある程度イメージが湧くのであれば、現地に出張へ行ってエンドユーザーとどんどん話した方がいいと思います。例えばB2BのIT系であれば、代理店ではなくてお客さんと。あとはマーケティングのヘッドに、こういうアイデアがあるんだけど進出したら買ってくれるかなど、直接聞いてみるのも良いと思います。

日本が儲かっていて、日本である程度パイがとれる状態であれば、あとは海外に行くしかないでしょう。でも日本が伸びていない状態で海外に出てもジリ貧になるのでやめた方が良いですし、日本で伸びていてまだまだパイが取れそうなのであれば日本で頑張った方がよいです。日本で取り切る目算があって、海外に対してワクワクするのであれば進出した方がいいと思います。


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