海外でのマネジメントは判断力を倍磨く 【Techbase Vietnam 白川 健一 氏】

白川 健一 氏 | Techbase Vietnam

大学院卒業後、機械メーカーに入社。2001年にヤフー株式会社に入社。大手ポータルサイトYahoo! JAPANの「Yahoo!ショッピング」や「ヤフオク!」の開発部門長や人事等を経て、2015年5月のTechbase Vietnam設立と共にベトナムに赴任。

現在のお仕事について教えてください!

私はYahoo! JAPANを親会社に持つベトナム現地のソフトウェア開発企業Techbase Vietnamの代表取締役社長をしております。弊社はYahoo! JAPANの開発案件のみを扱っておりまして、ショッピング、ヤフオクや地図、ユーザー向け・社内システムなどの開発をしています。おおよそ20件くらいの案件を常時進行しています。

中学生時代から『ロボットを作りたい』という夢を描き始め、現在はベトナムでエンジニア組織をマネジメントする立場に

エンジニア

ベトナム人のエンジニアは何人くらいいらっしゃるのでしょうか?

今だいたい160人くらい社員がいまして、日本人は私と開発部のマネージャー、ビジネスアナリストと呼ばれる上流工程を担当する3人だけです。他のメンバーはベトナム人で、そのうちエンジニアは130-140人くらいですね。

エンジニアになったきっかけを教えてください!

私が中学生くらいの時に産業用ロボットが開発され、”人間ではなくロボットが仕事をしてくれる時代が来るなら、ロボットを使う側ではなく作る側になりたい”と思い始めました。そんな時、当時高かったパソコンを両親が購入してくれたことがきっかけでプログラミングを比較的早いうちから始めました。その後もずっとコンピューターを触り続けていたので、大学でも情報工学を専攻し、プログラミングをしていました。今でもAIが人間と一緒に働くといったところで私たちの会社がそういった先端技術を作りたいと、将来の夢みたいな感じで思っています。

ベトナムにご興味を持たれたきっかけはありますか?

2014年にYahoo!がEコマース革命ということで、ヤフオクのビジネスモデルを大きく変えたタイミングがありました。出店者様からの手数料を無料にするという大きな流れを作ったんですが、実際、組織の中ではシステムの構成変更や機能追加などの膨大な開発量が発生していたんです。ビジネス側はどんどん売ろうとするんですが、開発側はこんな開発ボリュームは今の体制じゃ到底無理っていう状況になったんですね。
その時に新卒採用や中途採用もたくさんしたんですが、それでも国内じゃ人材を取りきれないから海外を視野に入れようという話になりました。当時の本部長が11月中旬ごろに「明後日からベトナム行ってくる」と言って数日後帰ってきた時には「良いと思うから来年2月くらいから(オフショアを)始めよう」と言われました。(笑)そしてそれに指名されたのが私で、そこからベトナムと関わりを持ち始めましたね。

では、白川さんが海外のエンジニアと関わり始められたのはベトナムに行ってから、ということでしょうか?

はい、そうですね。

マネジメントの課題、改善策の鍵は開発プロセスと給料のリンク

マネジメント

外国人のエンジニアマネジメントでの苦労や失敗談はありますか?

我々はベトナムに行っていきなり会社を作ったわけではなく、現地にあるパートナー企業さんのラボという形で、6人のチームからスタートしたんですね。それは人事の評価やチームビルディングなどのイベントは向こうの会社が全てやってくれるからでして、ベトナムならではの人の扱い方みたいなものはそちらにお任せをして、ソフトウェア開発を自分たちがするという態勢を取っていました。なのでリスクを下げた形で始めました。
とはいえ、サービス上、絶対に動かないといけない機能の実装が漏れていたり、ソフトウェアの著作権に関する考え方の違いで驚くような出来事が起きたりしました。だから意思疎通が取れてなくて違うものが出てきたり、クオリティに対する考え方が全然違うなと感じましたね。

そういった課題をどういう風に乗り越えましたか?

パートナー企業から自分たちの会社を作って人事とかも自分たちでコントロールできるようになってから体制を変え始めてから改善が進み始めました。会社側がとにかくその通りにやりなさいと、決まりを作りました。その決まりを守れない人は評価を下げ、守れる人は評価を上げるようにしたんですね。だから開発の仕事と給料とリンクさせてマネジメントできるようにしましたね。

同じエンジニアでも「テスト」の解釈は違う!?

IT

マネジメントする際に気をつけたほうが良いポイントを教えてください!

新しく入社した人たちのバックグラウンドはバラバラなので同じことを言っても想像することもバラバラです。なので同じキーワードを聞いても想像することが違うんですね。会社で社員4人ぐらいに「結合テスト」という指示を聞いて、あなたは何をインプットして何をして、何をアウトプットしますか?って聞いたことがあるんですよ。そうすると4人とも答えが違ったんですよね。受け取り方が全く違ってはマネジメントできないですよね。だから言葉に対するアウトプットはしっかり決めるか揃えるかしておかないと、特に品質のマネジメントはできないですね。
もう一つは、ベトナムのエンジニアが自分のキャリアは自分で作るっていう想いが強いなと感じています。自分は将来こういう仕事をしたいので今こういう仕事をさせてくれとか、一年働いたから(役職を)変わらせてくれとか、給料も含めて色々な要望を聞きます。キャリアに関しては日本のエンジニアをマネジメントしている時以上に気にかけておかないと驚く要望が出てくるかなと感じますね。その辺りのテンポが早いのでね。

マネジメントはどう学ばれましたか?

あんまり具体的にはないですかね。最初の会社では5年くらいでコーディングなどの技術を磨きました。Yahoo! JAPAN に転職した後、すぐに管理職に移って12年、仕事しながら学んだというのが大きいかなと思いますね。Yahoo! JAPAN という成長と変化を続ける会社で働く事で様々なマネージメントの経験をすることができました。開発部分のマネジメントだけでなく、開発リリース後の運用や会社の人事戦略を考えるところに加えてもらったり、品質開発の室長、統括本部のセキュリティ責任者など、今思えば開発のマネジメントだけでなく、開発準備に必要なことを順番にやらせていただいたのでより管理職に対しての知識や経験を積めたかなと思います。

マネジメントは部下の方々にどう教えていますか?

部長がリーダーに対して2週間に1回くらい研修をしています。また、メンバーの管理力が足りないという課題があるので私も含めて1時間くらいセミナーやワークショップを実行しようと考えています。

日本本社とベトナム現地法人間のコミュニケーションの取り方

コミュニケーション

日本本社の方々がベトナム側のエンジニアのマネジメントをすることはありますか?

開発案件のマネジメントはプロジェクトとしてはやりますが、人事的又は労務的にキャリアの相談はあまりしないですね。

海外でのエンジニアマネジメントをする際に障害はやはりありますか?

初めての人がマネジメントすると問題はおきます。あとやっぱり上手な人と下手な人はいますね。上手な人っていうのはちゃんと開発案件はリリースに間に合わせますし、開発チームの雰囲気もすごく良いんですよね。この人と一緒に働きたいと言われる日本人もいれば逆の人もいます。
ただ今は比較的誰がやっても安定してスピードやクオリティが出るようになっています。これはベトナム側で開発プロセスを作ったからなんですね。上手くいったケースはなぜだろうという分析をし、それを会社の標準の仕事に落とし込むんです。初めて担当される方にはマネジメント時のコミュニケーションの取り方を始め、やり方やアドバイスを絶対に聞かれるんですが、その設計されたやり方に沿ってやっていただければもちろんOKですし、カスタマイズも可能なのであとはどこを変えていきましょうか、という話をして、失敗の確率をだいぶ下げてから始めることができています。

マネジメント経験が豊富な方が初めての方のメンターにつく制度はあった方が良いと思いますか?

あったほうが良いと思います。私ともう一人の日本人が元々Yahoo! JAPAN出身でベトナムに来たので、親会社の立場になって話ができるんですね。ですので私たちが日本側の担当者と話をして、ベトナム人のマネージャーには言いにくい悩みや開発案件とは別の課題などを聞いて、他の人の成功事例を話したり助言をするなど、コンサルのような形で相談を受けています。

最後に

海外進出

今後の展望を教えてください!

会社として今は「まるっと率100%目標」というものを掲げています。我々の会社は作った時に比べ、クオリティを作る・信頼を得るというフェーズがどんどん進んできています。セキュリティに関しても、認証を取ってレベルアップしているんですが、そんな中、開発は任せられるがプロジェクトを出すために結構時間を使っていることが数年前から問題になっていました。「国内の業務委託だとまるっとお願いをしてもできるが、ベトナムではまだそれができない」と言われて、なるほどと感じました。だからまるっと任せられる会社になった方が良いんじゃないかという話になり、まるっと率というものをKPIという形で管理をし始めました。細かく話すと、業務の範囲と難易度、開発のスピードとクオリティ、この4つの要素を親会社と同じレベルにしましょうという活動なんですね。これが親会社と同じくらいのレベルになればまるっと仕事は任せられるし、同じチームメイトとして開発ができるようになりますよね。だからアウトソーシングやオフショアの会社というより、”ただ自分たちの会社の開発チームがベトナムにいるだけ”と思ってもらえることを目標に今取り組んでいます。これが来年の3月達成予定でして、それが終わったら冒頭で話したように先端技術を作る側になりたいので、(本社と)同じレベルになってから僕たちの技術的に得意なことを作りたいなと考えています。

今後海外に進出したい企業・個人に向けて、メッセージをお願いします!

僕は海外に来て6年目ですが、「白川さん、海外に来て良かったですか?」と聞かれたら「良かったです」と答えられます。何が良かったかというと、日本にいるだけでは経験できない色んなことが経験できるんです。それを自分とは価値観の全く違う人たちと一緒に目標を設定して課題を解決していくというのは海外でしか経験できないし、日本に戻っても役に立つと思っています。視野を広げ、経験値を増やすという意味で良いと思いますし、マネジメントのポジションでもし海外に出られるのであれば、それは大きな意味のあることだと感じます。おそらく日本にいるよりも「判断をする」という経験が増えるんですね。実際私が日本の会社に勤めているときの判断の数やクオリティと、今のベトナムの会社での判断というのは大変さが違うので(皆さんも)鍛えられるんじゃないかなと思います。


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