寺澤 康輝 氏 | 株式会社LillyHoldings
岐阜大学大学院を卒業後、住宅設備のメーカーにて研究開発職として採用される。
その後、名古屋のベンチャー企業である株式会社LillyHoldingsに参画。
2020年より新規立上となるITソリューション部にて部長を務める。
2021年1月までの半年間で開発体制の0→1構築、新規事業開拓部門の立上、南米オフショア開発拠点の開拓に成功。
NPO法人JASIPA主催のイベント等に参加し、南米オフショアの知名度拡大を推進。
PM業務の側ら、現在までに社内DXの推進、受託開発事業の立上、MA・広告運用部門の立上等を行う。
はじめに、現在のお仕事について教えてください!
弊社、株式会社LillyHoldingsではボリビア・チリを中心とした南米のエンジニアと共に受託開発、社内のシステム開発に取り組んでおりまして、私はそのプロジェクトマネジメントを担当しております。
高い技術レベルがあって、ブルーオーシャンである南米のIT市場
オフショア開発拠点として、南米を選ばれた理由はありますか?
大きく2つ理由がありまして。
1点目は、南米は日本企業がほとんど進出していないブルーオーシャンであるからです。元々、フィリピンやベトナムなどの東南アジア諸国を拠点として検討・利用したこともあったのですが、レッドオーシャンの東南アジアよりも将来性を見越して南米に投資することにしました。
2点目は、発展途上国なので人件費は安いですが、技術レベルは高いからです。位置的にアメリカやヨーロッパなどの進んだ技術のオフショア開発を受けることが多く、そういった技術レベルの高い案件を経験したことのあるフリーランスエンジニアがたくさん採用することができるので、魅力を感じていますね。
そういった魅力があっても、なかなか日本企業が南米進出しないのはなぜなのでしょうか?
時差と言語の問題が大きいですね。まず時差ですが、日本とボリビアの時差は13時間で昼夜が完全に逆転しています。こちらが11時なら向こうは前日の22時なので、コミュニケーションに時間制限ができてしまいます。
また南米の多くの国ではポルトガル語かスペイン語が使われています。南米で英語が話せる人もしくは日本でスペイン語かポルトガル語が話せる人は少ないですし、加えて開発の知識まで求めると非常に敷居が高いです。
寺澤さんは南米のエンジニアと何語でコミュニケーションをとられているのでしょうか?
現在は英語でコミュニケーションをとっています。日本語、スペイン語、英語が話せる翻訳者もいるのでそれぞれの母国語で話すこともあります。
オフショア先の開発チームはどのぐらいの規模なのでしょうか?
その時々によって大きく変わりますね。というのも、向こうはフリーランスエンジニアをプロジェクトごとに雇っているので、メインでいる6名程度のエンジニア以外はその時々で人も規模も変わります。
10年キャリアがあっても突然クビに!? 日本と大きく違う雇用に対する価値観
海外のエンジニアマネジメントでどのようなことを意識されていますか?
日本での常識が彼ら彼女らの常識と同じとは限らないと自覚することです。例えば、先ほどのプロジェクトアサインの話ですと、日本では会社の人として雇うのでクビになることはなかなかないと思いますが、向こうではその会社で10年キャリアがあっても明日から来なくて良いよと言われる世界です。また、品質やデザインの感覚も日本人のそれとは大きく異なっています。お互いの常識が異なっていることを把握することは大事ですね。
日本と南米では雇用に対する価値観が違うのですね。
先ほども申し上げたように、日本では会社の人として雇うのでバックエンドエンジニアとして雇われても専門外の作業をすると思いますが、南米ではジョブ型採用なのでバックエンドの開発者はテストもフロントエンドにも関わりません。
欲しい人材を欲しい時にアサインするのが向こうのやり方で、その辺のルールがしっかりしていないです。以前、大手自動車メーカーのような大きな会社で明日から来なくて良いよと言われて、うちにジョインしたというエンジニアもいました。
海外のエンジニアマネジメントで苦労や失敗した経験はありますか?
もともと日本側と南米チーム側の間には翻訳者がいました。ある社内プロジェクトに取り組んでいた時、翻訳者自身は開発経験がなかったこともあり、翻訳者が自分の中で意訳をして伝えていたことがありました。私たちもまだ走り始めで仕様書や設計書をしっかり決めずにアジャイルだ!と開発をしていたこともあり、我々が翻訳者に伝えていた内容と翻訳者が現地エンジニアに伝えていた内容が異なっていました。更にそれを報告をする文化もなかったので、予定していたものと全然違う開発を長い間していて、結局想定の2倍ほど時間がかかってしまったことがありましたね。
その失敗があってからは、私たちが直接現地エンジニアと話せるように英語学習を始め、報連相が大事だと口癖のように言っています。
海外のエンジニアマネジメントをする上で大切なマインドセットを教えてください!
南米を拠点にしてオフショア開発を行うと、ここまで申し上げたような価値観の違いを感じることがあります。ですが、直接彼ら彼女らと話してみると、一部明らかに異なる部分はありますが共通する部分の方が多いと思っています。
向こうの価値観を理解することも大事ですし、日本ではこういう風に考えると向こうに伝えることも大事です。そういったことを常に考えながら意思疎通を図っていくことが大切だと思います。
寺澤さんにとって、南米の方々にはどのような魅力がありますか?
意外かもしれませんが、実はボリビアの方々は日本人が好きだということです。ボリビアにはオキナワという日本からの移住者の2世3世が住んでいる地域があり、そこでは日本語の看板が使われ日本食が食べられています。日本の文化が浸透していることもあり、日本人が好きで仕事をしている人も多いんです。
日本と南米のメンバーで作り上げた、お互いの良さを引き出すマネジメント
寺澤さんがエンジニアになったキッカケを教えてください!
元々理系出身で、プログラムを個人で書いていました。その知識を活用して、もともと紙媒体が多かった社内のシステムをプログラムに置き換えていたら、それが楽しくて現在やっているような仕事も本格的にやろうかなと思ったのがキッカケですね。
マネジメントはどのように学ばれたのでしょうか?
私たちはまだまだ小さなベンチャー企業なので、マネジメントに関しても先駆者がいたわけではなく私たちが初めて取り組みました。経験のあるアドバイザーを講師に呼んで体系的に学び、IPAや共通フレームを踏襲しつつ、ボリビア・チリのメンバーと一緒に作っていきました。日本と南米の良さが引き出せるようにフローをお互いに作っていった形ですね。
現在はメンバーの方々にマネジメントをどのように教えているのでしょうか?
アドバイザーの方と協力して研修を開いて、研修後から新人と経験者の二人三脚で仕様書作成やプロジェクトマネジメントを行っています。
マネジメントをしていて言語で苦労したことはありますか?
通訳は大変ですね。私はスペイン語は分からないですし、英語も得意なわけではありません。翻訳者を通すと業務的な内容だけになってしまう中、直接コミュニケーションをとるとその人の人となりなども分かってくるので、大変ですけどそういう部分を楽しんでやっています。
御社のメンバーで南米エンジニアとやり取りしている人はどのくらいいらっしゃるのでしょうか?
私含めて5-6人の日本人メンバーがオフショア先と直接コミュニケーションをとっています。英会話や英語を学ぶコンテンツには学習の補助金を出していて、英語学習には力を入れています。
最後に
今後の展望を教えてください!
ボリビアやチリのオフショア開発はまだ日本で全然浸透していませんし、私たちも宣伝ができていません。なのでセミナーなどを開催して、南米オフショアにはこんな魅力があるんだぞと知名度をあげていきたいなと思っています。
今後、海外へ活躍の場を広げていきたいと考えている企業・エンジニアにメッセージをお願いします!
海外のエンジニアは日本のエンジニアとは感覚が全然違います。だからこそ、日本にいるだけでは受けられない刺激を受けられます。挑戦したいと思う方はぜひ飛び込んでみてほしいですし、海外のエンジニアとコミュニケーションをとるだけでも世界は広がると思います。
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