渡辺 立哉 氏 | NEO THAI ASIA Co., Ltd.
2013年にCEOとしてタイに初めて海外進出し、その後もマレーシア、シンガポール、タイ、ベトナムと、東南アジアでの活動の幅を広げる。現在はNEO THAI ASIA Co., Ltd.でManaging Directorに従事し、タイでローカル従業員と共に日本親会社の製品販売・サポート及びノーコードを利用したアプリ開発に励む。
始めに、今のお仕事について教えてください!
弊社は日本のネオジャパンという会社が親会社になり、その子会社として今タイとマレーシアにあります。ネオジャパンはグループウェア「desknet’s neo」を自社開発し国内での販売をしていました。ですが国内でのシェアも取れて国内市場での限界が見えてきたので、販路拡大のためにASEANへトライをしてみようということになり子会社を作りました。現在の子会社でのミッションとしては、日本で開発したdesknet’sを海外で販売し、その後サポートサービスを提供することです。ですので海外子会社の体制としては、営業・サポート・マーケティングチームがありまして、2社協働でやっております。
ただ、開発をしないと言ったのですが、ノーコードを使ってお客様がアプリ開発を自由に生成できるツールがあるんですね。それも合わせて販売しているので、いわゆるプログラミングを使っての開発ではなく、ノーコードでアプリ構築をするというのは我々の方でも一部サービスとしてやっています。
IT急成長時代に東南アジアに飛び込む
IT業界に入ったキッカケはなんでしょうか?
一言でいえば当時のIT業界の成長の勢いに魅力を感じたという感じです。当時インターネットサービスが伸び始めた時代で、世の中の企業の成長に企業内の営業や経理のスキルが追いついていない中、自分の銀行員として培った経験がそこで活きるのかなと思い、転職を決心しました。
海外進出した背景について教えてください!
僕個人ではなく会社の方向性の中で海外やろうとなりました。2013年に海外に初めて来たのですが、ちょうどその頃は国内のエンジニアの人気が陰りはじめていたんです。情報工学を勉強した人が入るというより、文系のマンパワーが必要になっていました。ですから人材確保の点においても将来的には問題になるから今のうちから活動の範囲を海外にも目を向ける必要があるというのがまず1つの理由でした。それと当時日本でのシェアもそれなりに取れていたので今後日本の成長を考えるともう一杯一杯だから商売の範囲も海外に広げられるよう準備していこうというこの2点ですね。
海外で仕事をすることに対して行く前と行った後で心境の変化はありましたか?
2013年にタイに赴任するまでは当時の会社が海外を見据えていなかったので青天の霹靂で送られたという感じでした。ですから行く前に何のイメージもなく、来てから全てを受け入れるというような状況でした。だから(イメージが)変わったという面はあまりなかったですね。
海外に対する偏見とかもなかったのですか?
なかったですね。僕は小さい頃に海外経験があり、いわゆる帰国子女だったので外国人に対する偏りのある考え方もない方だと思います。
タイオフショアはするべき?しないべき?
オフショア開発成功へ導く鍵はなんだと思われますか?
個人的な考えになりますが、ブリッジSEはどこにでもいて役割が非常に多い中、日本語は話せるけど意外とソフトウェア開発や業務のことが分かっていないブリッジSEが多い気がするので、そこがコミュニケーションロスを生む原因にはなっているのかなと思います。なので僕がベトナムの会社を使う時は僕自身がブリッジSEになってかなり開発チームに入り込むくらい、仕様を具体的を細かく説明していくということはとても重要だと思います。
タイのIT市場について教えてください!
2013年に初めてタイに来て業務委託する際に当然タイの会社にもアプローチをしました。でも当時はまだまだITの市場は小さく、ソフトウェアエンジニアはオタク的な感じで、趣味と仕事を兼ねているような人が多かったんですね。更には彼らがやりたかったのはプログラミングだったんです。でもそれだけじゃなくて上流と下流工程や仕様、テストなどについてもしっかりと理解していないといけないですよね。彼らはそこにはあまり興味を示さずそれだと上手くいかないなと思ったので止めました。それが8年経って最近またタイ人のソフトウエアエンジニアと話をするとかなりタイでもソフトウェア開発に対する組織化がだいぶ進んで来ているなと感じます。大学で情報工学を勉強している人たちは、開発に必要な一連の工程を勉強してきていたので、レベルは上がってきているなと思いますし、これからも上がっていくと思います。
ただ、コスト的に見るとタイはあまり海外を見て、というより国内市場を見ている方が多いのでオフショア開発をメインでしている企業はあまりみたことないですし、単価もベトナムやミャンマーの方が安いとは思います。
日本企業が進出するならタイはありだと思いますか?
タイでも日本企業のオフショア開発拠点としてはそれなりにあります。日本の案件の一部をタイで開発するという感じですね。ただ個人的にはオフショア拠点を持つならタイではないかなとは思いますけどね。
オフショアするなら「〇〇人は〇〇だから」の先入観は一切取り除くべき!
言語で苦労されていることはありますか?
たくさんあります。タイやベトナムはまだまだ英語の識字率が低いためコミュニケーションの障害になってしまう部分はあります。さっきの話に加えるとブリッジSEに必要なスキルは2つあると思っていて、翻訳能力と仕様や要件などの業務プロセスをきちんと伝えられるかどうか。この二つを兼ね備えているブリッジSEは本当に重宝できます。
コミュニケーションで工夫されていることはありますか?
ミーティングの時間を十分に取るというのは一つですかね。一言二言では伝わらないので3回くらい別の言い方で言ってみると向こうも理解してくれるので。だから質が悪くても文量でカバーするという感じです(笑)あとはとにかくホワイトボードを使いまくることですね。言語が違っても絵を描くとあまり大差ないじゃないですか。だからお客様のところに言っても相手がタイ人の場合は事前にミーディングルームにホワイトボードを用意してもらうとかはありますね。
↓実際に使われているホワイトボードのお写真いただきました!
海外での仕事で他に気をつけていることはなんですか?
基本的には「〇〇人」から入らないようにしています。僕は社長という立場ではあり、ほとんどが日本人1名体制でやってきました。従ってある程度こちらのいうことはちゃんと聞いてもらわないといけないんですね。それをタイに初めて来たときに「タイ人は〇〇だから」と散々聞かされていたので確かに先入観はあったんですが、来てすぐにでもそんなの人それぞれだと思いました。だから国籍の一括りで判断するのではなく、あくまでも人としてどうなのか?を考えるようにしました。
でもその中でも宗教については彼らの人生のベースになっているから、そこに関してはちゃんと理解して、日本人と違う感覚があるということを頭の中に入れておいた方が失敗しないと思います。だからそこは多少勉強しておいた方が良いかなとは思います。
海外でも日本でもエンジニアと一緒に働く経験者が彼らに対して思うこと
海外エンジニアメンバーを雇って思うことはなんでしょうか?
日本人だったらなと思うことは多々あります。例えば報告の仕方一つにしてもそれ報告するならこれも報告しておかないとまずいんじゃないのとかありますしね。日本ってある程度マルチタスクができると思うんですが、外国人従業員はエンジニアに限らずマルチタスクがすごく苦手な人が多いんです。だからそこで気をつけているのは、タスクを細かく振って終わったらまた次のタスクを振るという感じでシングルタスクにしています。
エンジニア採用市場について教えてください!
エンジニアに求めることに人種は関係ないと思うのですが、圧倒的に勉強する人たちは昔に比べて減ってきているなという気はします。以前と比べてエンジニアが「職人」という意識下で物づくりをしていく上で、自分でスキルをあげていくという意識が少なくなっていると感じます。
ソフトウェアはお金と時間さえあれば何でもできるのでその中で最適化を求めるのですがお客さんにとって大切なのは、開発する事ではなく、そのシステムがきちっと運用出来て、使えることだと思います。作り手は納品してお終まいだけどお客様は受け取ってから初めてスタートなので、運用も含めて最適なものを考え続けないといけないなと感じます。そのためにはお客さんの業務を勉強しないといけない。世の中の常識や運用プロセスを学べる場すらもなくなってきてしまっている気がします。もう一度全体的にスペシャリストや職人的なところに戻るというか、そこの重要性を業界全体が理解した方がいいと思いますね。
最後に
海外に活躍の場を広げたい企業・エンジニアに一言お願いします!
少子高齢化が問題視されている中で日本企業は国内で圧倒的にシェアを増やすかもしくは海外に目を向けざるを得ないと思います。人材面でも少子化していくので全ての会社が自分たちにとって海外との関わりはどういう位置付けにあるのかというのは考えるべきだと思いますね。考えた上でやらないというのも一つの選択肢ですし。心構えは持っておくべきなのかなと感じますね。
でも個人レベルで言うと、本当に個人の価値観によると思いますので僕の方からこうであるべきだということはないですね。海外で生きていくということになると、現実では海外に駐在して半年〜一年で帰っちゃう人はいっぱいます。僕が帰国子女だったこともあり、一概にせっかくチャンスあるのだったら海外にいくべきだとは安易に言えないのですが、選択肢の一つには海外を入れておいた方がいいとは思いますね。でもみんなが思っているほど物理的にも精神的にも遠いところじゃないよということは知っておいて欲しいですね。チャレンジするならガチガチに構えなくてやるのではなくて、まずは自分の今できる範囲のところからチャレンジしてみて自分に合うのか合わないのかみてみるのが良いと思いますね。
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