生産性を高めない無意味な常識は、全部捨てる【PT. LOGIQUE Digital Indonesia 吉次 敬 氏】

吉次 敬 氏 | PT. LOGIQUE Digital Indonesia
1976年生まれ。1999年に早稲田大学理工学部経営システム工学科を卒業。株式会社日本総合研究所やコンサルティングファームなどを経て2005年よりEコマース事業、輸入商社、コンサルティング会社を起業。2012年よりインドネシアで複数の会社を経営。ここ数年は、インドネシアのほかに、マレーシア、フィリピン、ケニアなど他国でのプロジェクトも多数運営。

はじめに、現在のお仕事について教えてください。

Web制作からシステム開発、デジタルマーケティングまで、ITやDXといった領域のソリューションを、ワンストップで提供する事業を幅広く展開しています。
インドネシアでビジネスを始めたのは2012年からです。多くのインドネシア人スタッフとともに、さまざまなプロジェクトに挑戦しながら今の形を作り上げてきました。現在は、インドネシアを中心に、フィリピンやマレーシア、アフリカでのプロジェクトでクライアントのビジネスを支援し、約85名のインドネシア人スタッフと協働しています。

日本での経験を経て、挑戦の地・インドネシアへ

インドネシアをビジネスの場として選んだきっかけは何ですか?

大学卒業後、コンサルティング会社やITベンチャー企業などで経験を積んだ後、日本で起業。ヨーロッパ企業とのビジネスも経験しました。その経験を通じて、日本特有のビジネス観、またそれとは異なるヨーロッパ企業の価値観を学ぶことができたと感じています。そして、次の自分のチャレンジを考えた時に、日本以外の国でかつ、欧米とはまた異なるチャレンジングな国で活動したいと考えて、東南アジアを選びました。

インドネシアを選んだ理由は、そのポテンシャルと規模の大きさはもちろん、別の観点では、参入障壁の高さが当社のビジネスをする上ではポジティブな点でした。これのおかげで今も、ユニークで強固なポジションを持てていると考えています。

インドネシアでのビジネスを始めた時に、苦労されたことは何かありましたか?

苦労というほどのことでもないですが、やはり興味深かったことは「宗教」ですね。インドネシアは人口のおよそ90%がイスラム教徒で、人口比でいうと世界最多です。彼らの日々の生活は礼拝をはじめ、さまざまなイスラム教の教えに根差しており、その優先順位は時に、仕事やプライベートの事由を超えることもあります。

私は、ビジネスでは誰もが、「合理性」の優先順位を最も高く設定するべきだと思っていたのですが、インドネシアではそれを押し付けることができない、押し付けてはいけないケースがあり、それを受け入れていく過程は興味深かったです。そこから、「自分が影響力を及ぼせる事で生産性を向上させていく」方が合理的だという考え方に変わっていき、関与せずに自由を与えることと、しっかり管理することを分けていくようになりました。

インドネシア以外でもご活動されているのでしょうか?

他国でのプロジェクトも運営していますが、インドネシアからマネージできる範囲で今のところは行なっています。インドネシアだけでも大きなマーケットで高い成長をしているので付いていくのに必死ですが、他国でのチャンスも逃さないようにはしたいです。

現在、会社経営で難しさを感じるところは何かありますか?

今は、優秀なスタッフのおかげで、大きな難しさを感じることはないです、幸せにやっています。(笑)

乗り越えないといけなかったことも、今思うと、すごく大きかったわけではなかったですね。宗教や言語、文化の違いなどについても、比較的楽しみながら乗り越えることができたと思います。

「インドネシア」という国が、吉次さんの性格に合っているのかもしれませんね(笑)

そうですね。元々、物事を合理的に考えて取り組むことが好きで、自分が納得できないことをやるのが嫌いなんです。ですので、20代のころは、日本での仕事に結構ストレスを感じていました。当時は日本特有の、いわゆる“古いしきたり”が色濃く残っていて、私から見て、納得がいかないこと、合理的でないこと、生産性に寄与しないと感じることがたくさんありました。そこでヨーロッパの人達とビジネスをする機会があったのですが、彼らの、合理的な反面ヨーロッパ特有の伝統を重んじる世界も、それはそれでしっくりきませんでした。

東南アジア、特にインドネシアは、囚われるものが少ない、やりたいことをやりたいようにやれる土壌があると感じています。そんなところが、自分にちょうど良くマッチしているのかなと感じます。

現場に合わせた柔軟なルール作りが、エンジニアの生産性を引き出す

マネジメントにおいて、大切なポイントを教えてください。

HR(人事)ルールは、かなり工夫している方だと思います。
昔から、日々新しいルールを作っては検証し、PDCAサイクルを回しています。たとえば、コロナ禍前の早い段階から、リモートワークは取り入れていましたし、「コミュニケーションや勤怠など、エンジニアとして仕事をする上で重要でない要素が欠落していたとしても、やるべきタスクの生産性を向上させてくれれば良い」ということを、スタッフ全員に伝えています。

また、個人の1日の勤務時間を決めることはほぼしません。「週40時間勤務」とだけ設定して勤務しているスタッフもいます。チームによっては、時間を固定しないとチームとしての生産性が上がらないところもあるので、そういったチームにはその形に即した勤怠ルールを許可しています。チーム・スタッフ自身が、もっとも生産性が高くなると考える勤務スタイルを設計し、のびのびと働けるようなルールを設けています。

他にも、毎月ボーナスを査定するシステムを導入するなど、柔軟性を意識した仕組み作りを心がけていますね。

反対に、ルール作りで失敗したエピソードはありますか?

なるべく柔軟に仕事してほしいと思っているのですが、「自由」と「責任」のバランスを誤って捉え、度をこしてしまうスタッフもいるため、その都度アクセルを踏んだりブレーキをかけたりの調整は加えています。こういった、細かい調整が功を奏しているのか、大きな手痛い失敗というものはあまりなく、「失敗」になる前に気づき、その時々で手を打つことができていますね。

インドネシアのエンジニア市場については、どうお考えですか?

大きな可能性がある、ポジティブなマーケットだと思います。インドネシア人は柔軟性が高いため、新しいテクノロジーなども、いち早くキャッチアップすることが得意な人が多い印象です。「最新のプログラミング言語などを短期間で吸収し、ある程度のレベルまで熟達する」という能力が、日本やその他の国々と比べても優れていると感じますね。

最後に

今後の展望を教えてください!

コロナ禍に見舞われても、インドネシアの内需は変わらずポジティブな状況です。日本では、今後IT人材が、70~80万人ほど不足すると言われていますが、インドネシアでは、「2030年に900万人足りなくなる」という予測があります。このスケールをもつ、IT大国になる可能性のあるインドネシアで引き続き、私たちのITソリューションを届けていきたいと考えています。

海外へ活躍の場を広げていきたい企業・エンジニアにメッセージをお願いします!

—– 海外への進出を考えられている方々に向けて
日本もとても恵まれた国だと思いますが、インドネシアも非常に面白い国で、ビジネスの場としても将来性や夢がある国です。日本での働き方に違和感をお持ちの方は、一歩踏み出して、インドネシアや新しい場所で挑戦してみることをおすすめします。

—– オフショア案件をやっている企業・エンジニアの方々に向けて
日本でのやり方を海外にそのまま持っていくのはではなく、その国のやり方にあわせていく、といった姿勢が必要だと思います。ITの世界においては、日本が進んでいるとは、私はあまり思っていません。彼らにならい、彼らの知識や考え方を吸収し、そこからキャッチアップした経験を活かして、海外でより大きなことをやっていくという考え方にすると、もっと大きな世界が開けていくのではないかと感じますね。


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